「そーちゃんっ」
「おかえり名前!」
「ただいまー総ちゃん」

 学校が終わって急いでスーパーまで夕方限定の特売品を買いに行って、競輪選手並の…とそれは言い過ぎだけど、現在帰宅部な私としては最速でチャリをこいできた。
 そんな私を玄関で甲斐甲斐しくも出迎えてくれたのは総ちゃんで、そんな総ちゃんを見るとまた明日からも頑張ろう、と思えてしまうから不思議。

「今日は久しぶりにカレーにしようかな!総ちゃんはカレー好き?」
「うん!」

 良かったー、と総ちゃんの表情に気がつかないまま台所に立って料理を始める私に、総ちゃんは何か手伝いたげに私の足元を右往左往している。

「総ちゃん、待っててくれるの凄い嬉しいんだけど、お友達と遊んできてもいいんだよ?ご飯までに帰ってくれたら…」
「嫌でィ」

 名前と一緒がいいんでィ、そう言って私の左足にその小さな身体で抱き着いた総ちゃんに、私は言いかけた言葉も飲み込んで、この可愛い小さな弟を私が絶対に守るんだ、そんな決意が凝り固まった塊みたいにして大きくなったのを感じた。

「総ちゃん、今日も私夜出掛けちゃうんだけど、大丈夫?」
「大丈夫でィ、もう9才ですぜ」

 もし何かあったらマダオの所に行きまさァ、そう言って次々にカレーを頬張る総ちゃんに、どうしようもなく疼く胸を抑えて、偉いね、と総ちゃんの頭を一撫でする。
 マダオというのは長谷川さんという、うちの家の隣のアパートに住むおじ…お兄さんで、同時に今はうちの高校の用務員をしている人。長谷川さんとはそれこそここに越してきたときからの知り合いで、両親とミツバちゃんを亡くしてからは度々私たちを気にかけてくれる。

「俺なら全然大丈夫なんで、名前はなにも心配しなくていいですぜ」
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -