志村からあの話を聞いて俺はずっとどうするべきかと悩んでいた。もしもの事があってからでは遅くて、それは十二分にわかっているつもりではあるけれど、名前自身が抱えているもののデカさを、俺はまだわかっているようでわかっていない。

「おはよー銀ちゃん」
「お、おう!」

 おかしな態度を示した俺に対し土方から気持ち悪いんだよと言われたけれど、その目は珍しく悲哀にみちていた。少なくとも、俺を本心から気持ち悪いだとか思っているというわけではないらしい。
 土方が俺を気遣うなんて気持ち悪いから、早く名前と前みたいな関係にもどりたいと思うのに、名前は未だ俺達からどこか遠い。

「なあ、顔色悪くねえか」
「え、そうかな?」
「…無理、してねえのか」

 土方が名前の顔を覗き込んだかと思えば、名前はくるりと一回転して見せて平気だと笑う。何が平気なんだ。平気なわけがない。志村の話によると週三であの店に勤めているらしいが、朝は弟送り出す前に朝飯作って自分の弁当作って。帰ってからも確か週末は結婚式場のスタッフのバイトまでやっているらしい。なんで結婚式場のスタッフなのかといったら、それはただ単に時給が高いからだそう。
 全部ここ数ヶ月で志村が調べるまた見聞きした情報だ。
 つまり俺達は心配だなんだと言いながら、名前のことを何一つ知らずにいたということで。

「へこむわー」
「口に出すな、余計堪える」

 昼休みの屋上、なんだか名前は委員会の用事があるとかなんとかで、俺達だけのとっておきの場所…と言っても、屋上の鍵がたまたま刺さりっぱなしになっていたのを発見しただけなんだが、そこには野郎の姿が二つという、なんともまあ絵にならない様だ。

「昨日家帰ってから、あの店のこと軽く調べてみた」
「ああ」
「したら表明では客に女が酌して話を聞くっつー体裁だが、実際はその先も交渉によりありになってくるらしい」

 ネットの口コミとか掲示板とかありとあらゆるヒットしたとこまわって、それでわかった。
 頭をガシガシと掻き回してからあーっとうなだれるようにして頭をだらんと下に降ろした土方は、どうすりゃいいんだよ、と小さく呟いた。

「やっぱそういうことか…」
「…今日名前の家行ってみるか」
「強行突入てわけかー」

 それしかねえもんな、と自分に言い聞かせるようにして言えば、それは土方も同じだったらしくそうだな、と続けた。

「総悟のやつも心配だし、な…」

:)100127
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