※性的描写が少しあります。18歳未満の方はご遠慮ください。



 「んっ……あ」

 小さく仰け反る自身の身体に、細められた銀時の目。視界に映るのは情事故のもので、呼吸を整える間もなく一度引き抜かれた銀時のものがゆっくりと奥まで入ってくる。

「はや、い……あっ」
「最近抜いてねーからな……そろそろやばいわ」

 彼女とやってないんだ、だとか、一人でやらないのは彼女のため? だとか。銀時の一言について考え出したらキリがない。
 第一そんなことを深く考える余裕もない私は、銀時の背中に手を回すことで精一杯だ。銀時の余裕ぶっている声に微かに混じる吐息がやけに色っぽい。

「だめ、もっ……やぁ」
「俺もっそろそろ……な」

 その言葉とともに、彼はそれまでとは違って少し緩急をつけて奥を二回ついた。一瞬にして快感に全身を支配された私は、敏感な身体で今しがた果て抱きつくようにしなだれかかる銀時を受け止める。直接触れる胸や腕も、今はその全てが性感帯のように作用してしまう。

「そろそろ帰るね」

 手短にシャワーを済ませ、タオルで髪を拭きながらベッドに座ってテレビを見ている銀時に帰る旨を伝える。ないとは思うがもし彼女が訪れてきたら大変だ。今まで銀時の彼女と鉢合わせをしたことがないのは、この私の慎重さの賜物と言っても過言ではない。始発で帰って一眠りしよう。そう思ってかえの下着を取り出そうと鞄に手を延ばした瞬間、もう片方の手を銀時に掴まれた。

「な、なに?」
「……」
「どうしたの?早くしないとっうあっ!」

 急に景色が反転。腕を勢いよく引っ張られて、私は銀時の下でありベッドの上に逆戻りした。最初は気が動転して視線を右往左往させるしかなかったけれど、銀時の真剣な眼差しに気づきそこから反らせなくなってしまう。

「ど、どしたの」
「お前さ、彼氏と別れたんだろ」
「うん……そう、だけど」

 それから暫くの沈黙。長らく付き合っていた彼氏とは確かに最近別れた。でもそれは銀時には関係のないことだし、最後の方は気持ちの無い形だけの関係だったようなものだからさして言う必要もないと思っていた。何故別れたか、というか何故気持ちの無い関係になってしまったかと言えば、それは銀時に関係することではあるけれど銀時自身には関係のないことだ。しかしなんで銀時はそのことを知っているのだろうか。

「なんで別れた」
「べ、別に……お互いに冷めちゃって」
「なあ、」

 話の途中で遮られる。銀時の口調は切羽詰まったもののように思えた。

「俺の彼女みたことあるか」
「ないよ。当たり前じゃんそんな状況になったらまずいもん」
「俺さ、最初から彼女なんていねーんだわ」
「……え?」
「その方が、お前が俺といることに罪悪感感じなくなるかなって」

 同じ条件同士のほうが、俺のこと受け入れてくれるかなって思った。
 銀時の言葉を飲み込むのに、少し時間がかかってしまう。つまり、銀時に彼女がいるというのは嘘だったということだ。混乱している思考回路とは別で、その言葉を聞いてどこかホッとしている自分がいる。

「なんで、そんな嘘……」
「言わなきゃわかんねぇ?」

 銀時の息が私の前髪を揺らした。言葉の裏にあるものを、私はわかっている。

「なあ、お前は俺のことどう思ってんの」
「どうって、それは……」

 銀時の一番はずっと私だったのだ。思いがけない事実に少しぼうっとしてしまう私に、銀時は触れるだけのキスをした。

「好き、だよ」

 そんなことを言っても銀時を困らせるだけだとずっと思っていた。最初は少しうまくいかなくなった彼氏への当て付けのような慰め合いのようなものだった。でも、いつの間にか私の中心は彼氏ではなく銀時がいた。しかしそんなことを銀時には言えなかった。銀時には彼女がいて、所詮私なんて都合の良い女だ。それでも銀時の傍にいたいという一心で、不毛な関係を続けてきた。その途中彼氏への罪悪感から耐えきれなくなり別れ、まだ見ぬ銀時の彼女に対しても申し訳ないと思いながら、それでも銀時のことを想っていくのだろうという覚悟もできていた。

「馬鹿。何泣いてんだ」
「ごめ、なさい…」

 想いの叶った嬉しさと、絡めとられていた罪の意識から解放されたような清々しさ、様々な感情が交差して自然と涙が溢れた。その涙を舐めとって、私の頭をそっと撫でる銀時は今まで見た中で一番優しい顔をしている。

「騙してて悪かった」

 優しく重ねられた唇に、一度止まりかけた涙がまた溢れ出す。幾度も角度を変え、啄ばむようにして触れる銀時の唇は柔らかく、何時もならば舌を入れてしまうところなのに、いつまでもそうしていたいようなやわらかな優しさを感じた。

:)140326
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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