目を覚ませばカーテンの隙間から光が差し込んでいた。今日もこんな朝を迎えてしまったことへの若干の自己嫌悪と、抑えようとしても込み上げる幸福感。馬鹿みたいな感情を払拭しようと勢いよく上半身を起こせば、激しい頭痛に見舞われた。最悪だ。昨日馬鹿みたいに飲んだ自分を恨む。時計を見ればもう昼前を指していて、穏やかな顔をして眠る晋助に腹が立った。

「晋助、起きなよ仕事あんでしょ」
「うるせぇあと5分…」

 寝苦しそうに布団に顔を埋める晋助もまた、同じように頭痛に見舞われているのだろう。二人して二日酔いなんて、職場の人になんて言い訳しよう。
 こうなってしまった晋助はたちが悪い。あまり関わりたくはないけれど、仕事に遅れたと後で怒られるのはもっと面倒臭い。気怠い身体を起こしてベッドからおり、手短かに下着を身につけてから勝手知ったる台所へと移動した。上の棚から二日酔い用に晋助が買い溜めしてあるヘパリーゼと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してまたベッドへと戻る。未だ布団に潜る晋助を揺すってほら、とその二つを手渡せば、もぞもぞと動いた揚句やっと布団から顔だけ出した。

「飲ませろよ」
「瓶ごと突っ込むよ」
「可愛くねぇな…そうじゃねーよ」


 もっとあんだろ、と眠気の覚めぬ口調でニヤリと口角を上げた晋助に少し呆れながらも、寝起きなんていつもこうなのだから仕方ないと半ば諦めて瓶の中の液体を口に含む。どうせ私も飲むんだから一緒か。
 そのまま晋助に口付けるようにして咥内の液体を晋助のそこに流し込めば、晋助は待ってましたと言わんばかりに貪るように私の咥内に舌を入れた。

「んっ、はあ」
「締まりのねえ顔をだな」

 さっきまでの眠気はどこに行ったのだろうという程に、晋助はすっきりした顔をしていた。なんだか悔しい。彼女にしてもらえばいいじゃない、なんて私のなけなしの反撃に、もうそういう時期じゃねーんだよ、と返された。嫌味でも言ってやろうかと思ったが、私も人のことを言えるような立場ではないのでやめる。
 じゃあもう早く行きなよね、と一度ベッドから立ち上がるけれどまたベッドの上へと戻される。ああなんだか嫌な予感。


「始業時間まであとどれくらいだ?」
「…3時間、くらい」
「会社までは?」
「車ならあんま…てちょっと!」


つけたばかりの下着を取ろうとする晋助の手を掴めば、さっさと終わらせらァ、ともう本人はその気。きっと本当の彼女にはこんな風にできないんだろうな、なんて頭の片隅で考えてから、メールチェックする時間あるかな……なんて不安が頭をよぎる。
 それでもとりあえず最後に釘をさしておこうと口を開こうとしたら、それを晋助にふさがれてしまった。ああ、こうしてまた私たちの生ぬるい関係は続いていくんだ。


 埋め合わせの気持ち

「会社まで一緒に車で行ったりなんかして…こんなことばっかしてるとまじで彼女にばれるよ」
「そん時はお前も一緒だろーが」
「性格悪、」
「それお前に言えんのか?」

お互い自分の大切な人に嘘をついていることなんて承知の上。それでもお互いがお互いに依存している今の状況を楽しんでいるのも事実。

:)120806
昔のサイトの焼き直しです
時間があれば続きもあげます
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