日々の練習と水曜日の集会のおかげで私の学校への出席率は格段に上がった。意識が高まったというわけではなく、強迫観念という情けない理由と僅かな義務感からではあるが。
「晋ちゃん」
「なんだよ」
「学校行こ」
「……」
朝八時。そろそろ家をでなくては朝のホームルームに間に合わない。しかし練習は放課後だし、今日は水曜日ではないから遅刻くらいならいいよねとは思いつつも一応家主よりも寛いだ様子の晋ちゃんに声をかける。
「無視ですかコノヤロー」
「……それもしかして銀八の真似か?」
「似てた?」
「アホ面だけな」
グーで晋ちゃんのお腹を軽く殴る。私と同じようにダラダラしている人のものとは思えないくらい、薄いシャツの上からも晋ちゃんの綺麗な腹筋がわかった。
「すぐそこに公園あるじゃん」
「ああ」
「あの公園、四号公園って言うんだって。知ってた?」
へー、とさも興味がないような返事を返して、晋ちゃんは手近にあったリモコンに手を伸ばしテレビの電源を入れた。
「ねえ、晋ちゃん」
「なんだよ」
「坂田先生が私をZ組に入れた理由は打算だって言ったんだけど、どういう意味がわかる?」
「……いや、わかんねぇな」
「だよね。なんか企んでるのかな、それとも何にも考えてないのかな」
視線をテレビに向けた晋ちゃんの横顔は、何か知っている風にも思えた。
「ねえ、学校いこ」
「なんでだよ」
「単位危ないんでしょ?」
「まだ一年あらァ」
最近学校に行って話す人が増えた。そしてクラスの人と話したり、バレーをしたりする度に思う。もしここに晋ちゃんもいたら楽しいだろうな、なんてことを。皆が当たり前のように受け入れてくれる環境でも、急に溶け込むことはできないし私自身慣れるのに時間がかかる。完全な私の我儘ではあるが、やはり一緒にいて気兼ねしない晋ちゃんの存在は大きい。
「最初Z組って言われたとき驚いたけど、晋ちゃんと一緒だから嬉しかったんだから」
「……」
晋ちゃんの顔を覗き込むようにしてみると、晋ちゃんは盛大な溜息を吐いた。そして、面倒臭そうに立ち上がる。
「いく!?」
「便所」
「……」
「……昼飯食ったら行くぞ」
途端に嬉しくなって晋ちゃんの背中に本当!? と問いかけると、振り返らないままなんか美味いもん作れよ、と言ってトイレのドアを閉めた。
ありもので作ったチャーハンを食べてから登校すると丁度国語の授業中で、教卓の先生は心なしか私たちを見てニヤリと笑った気がした。