※未成年夢主の飲酒喫煙が作中にございます。そのような行為を推奨しているわけではありませんが、苦手な方はご遠慮ください。


 クラス替えに関して、また子か晋ちゃんと同じクラスになれたら、わざわざ放課後遊ぼうとメールする手間が省けるなあくらいにしか思ってなかった。だからどのクラスと言われてもなんとも思わないだろうと思っていたけれど、流石にこの結果には驚いた。

「え! 名前Z組なんすか?」
「うん。流石に驚いた」
「晋助様と同じなのは羨ましいけど、何かやらかしたんすか」
「いや、サボったりもまた子と同じようなもんだし、そこまで大きな心当たりはないんだけどな…」

 まあ、頑張るんすよ。と適当な言葉を私に投げたまた子は、急に私の口から煙草を抜き取って器用に足で土に埋めた。

「なんだ、服部っすか」

 建物の影から姿を表したのは服部先生で、一年生のころの私たちの担任である。また子が私の煙草を埋めたのは、人の気配というか教師の気配に敏いからだろう。また子といると先生に煙草を見つけられたことがない。

「なんだとはなんだ、なんだとは」
「服部先生なら捨てなくて良かったね」
「本当紛らわしいっす」
「ったく、また煙草でも吸ってたんだろこの不良娘ども」

 服部先生に丸めたプリントの束で頭を叩かれる。このイマイチ覇気のない服部先生の感じが、私は好きだったりする。

「てかなんで名前Z組なんすか?」
「そうだよー吃驚したんだから」

 ああ、と言葉を濁しながら何かを考えるような素振りをした服部先生はまあいっか、と小声でひとりごちてから私たちに視線を戻す。

「銀八の推薦?ってやつだな」
「坂田先生?」

 坂田先生はZ組の担任で、一二年と国語を教わった。部員一名の地学部の顧問もやっているけれど、活動に参加したこともなく書類提出の時の判子を二回ほどもらいにいったくらいで、そもそも部長でありただ一人の部員の私も地学部の活動なんてやってない。だからそこまで仲が良いわけではない。そんな私の考えを察したのか、俺も良くわかんね、と面倒臭そうに言った服部先生に、私も面倒になって考えることやめた。

「おら、HRはじまっちまうぞ不良娘ども」

 服部先生に促されるまま体育館裏をあとにした私たちは、足取り重く校舎に戻って階段を昇った。学年が上がるごとに教室が下の階になるという制度は、私みたいなやる気のない生徒からしたら一つの進級の喜びになるもので、ちょっと嬉しいねとまた子に言うと突拍子もなかったから仕方ないけれど、意味わかんねっすよと笑われた。

 何はともあれ、春である。
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