おお振り 小説 | ナノ
ベッドマナーは守りましょう



性的描写があります。十八歳未満の方はご遠慮ください。



 きっかけは和さんの元カノだったから。こんなことを言えば名前さんは勿論、和さんにこっぴどく怒られることは目に見えている。でもきっかけは確かにそうであっても、今はちゃんと大好きなのだから特別言う必要もないだろう。
 そう思っていたのにどう言う訳か俺の心中は名前さんに筒抜けだったようで、初めて体を重ねようという今になってそんな話を持ち出してきた彼女は少し意地悪だと思う。

「準太は、私が和己の元カノだから気になったんでしょう?」

 長い長いキスを終えて、名前さんは扇情的な表情を一切崩さずにそう言ってのけた。図星だからか、突然だからか。俺の感情はきっと顔に現れてしまっているのだろう。それでも名前さんは俺の目を逸らさない。

「だったら、なんすか」
「本当に和己のこと好きだなーって」

 同じくらいに、いや、和さんとは別の次元で名前さんのこと大好きですよ。言ったところで名前さんはふーん、と全く興味を示さずに俺のナニをつつ、と指でなぞった。反射的に強張る俺に、名前さんは更に刺激を加えてゆく。この人はきっと俺の反応を楽しんでるんだろうな。悔し紛れに名前さんの乳首を口に含めば、予想に反してすぐに甘い声が漏れた。ふるふると揺れる睫毛が可愛らしい。

「可愛いっすね」
「う、るさいなあ」
「強がる名前さんも好きっすよ」
「や、あ……ん」

 先ほどまでの余裕はどこへやら。立場は一気に逆転した。この人は無理に強がるためにあんなことを言ったのだろうか。それならなんて可愛いことか。不規則的に舌を動かして、下にも空いている手を這わせる。俺を握る名前さんの手に力がなくなったところをみると、ただ意地になっているようにも思えてまた可愛い。
 普段強気な態度しかとらない名前さんのこんな姿は貴重だ。正直写メでもムービーでも撮っておきたい。できればムービーで。絶対に変態扱いされるだろうけど。

「名前さんって経験豊富ってイメージなんすけど」
「はあ…んっ」
「経験豊富なのは確かかもしんないすけど、イニシアチブは握れないんすね」
「うる、さい、なあっ」
「そんなとこも可愛いっす」
「も、やめて……ほんとっん」

 あー楽しい。俺の言葉に必死にまともに答えようとしている名前さんが可愛くてたまらない。もっと意地悪なことを言ってしまいたくなる。身体の奥からフツフツと湧き上がるこの感情を、俺は抑えきれずに身震いする。言葉攻めに目覚めてしまいそうだ。
 赤い顔をして恥ずかしがっていた名前さんに、もう一度唇を落とす。急に荒々しく咥内を弄った時に苦しそうに漏れる声が堪らない。なんでこの人はこうも俺のツボを抑えてくるのだろう。

「名前さん」
「な、によ」
「そろそろいいっすか」

 了解の返事も聞かずに腰を埋める。途端に変わる名前さんの苦しそうな表情と俺自身の快感に、どうにかなってしまいそうだ。

「全部はいりましたよ」
「言うな、ばか」
「痛いっすか」
「……ちょっと」

 目をそらしてそう言った名前さんに急に優しくしたくなって繋がったまま抱きしめた。本当は今すぐにでも動きたくてしょうがないけれど、これはこれで良い。なんか、良い。

「どしたの、急に」
「こういうのもいっすね」

 名前さん照れるし、と伝えると力なく頭を叩かれた。全然痛くないし、むしろ可愛い。

「動いていーよ」
「え?」
「だ、だから……動いて、いーってば……」

 俺と目を合わせてすぐに反らした名前さんの潤んだ瞳に、俺の一切の理性が吹き飛んだ。徐々に始めたストロークに名前さんの顔はまた歪んだけれど、少しづつその表情が恍惚なものへと変わっていくのがまた楽しい。ああ、今俺がこの人のことを気持ちよくさせているんだ。

「中に出していいっすか」
「良い訳ないだろバカっ」

ベッドマナーは守りましょう
本気で頭叩かれた。

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