銀魂 小説 | ナノ


月明かり


性的描写が少しありますので、十八歳未満の方はご遠慮下さい。



畳を撫でる音がやけに大きく聞こえる。そっと爪で畳の目をひっかくと、少し畳が傷んだ。月明かりが差し込むだけの薄暗い部屋に、今私はたった一人きり。

「電気、つけねーのか」
「遅い」

悪い、そういって襖を閉めたのは十四郎。彼の声を聞くだけで涙が零れそうになる。でもそれをぐっと我慢して笑みを浮かべる。残業か、はたまたここに来たくなかったか。考えても無駄だとは思っていても、彼の顔色を伺ってしまう。


「結婚、おめでとう」
「ありがとう」

祝賀パーティーと言うにはあまりにささやかに、お猪口に注がれたお酒に口をつける。本当のパーティーは数日前に行われた。真選組やこの町の皆が揃ってお祝いしてくれて、それはそれは賑やかで楽しいもので。その時の皆の騒ぎようを思い出して一人思い出し笑いをしてしまう。

「お前が結婚なんてな」
「それ皆に言われたわ」

もう空になったお猪口にお酒を注ぐ十四郎の指先、腕、首、髪の毛。全てが愛おしくて、でも私には届かなくて。あまりお酒に強くない私の視界がぼやける。

「お前…」
「ちが、酔っちゃったから…」

必死に取り繕う私の手を、十四郎の手が覆う。大きくて武骨な彼の手。叶わないことほど、どうしてこうも綺麗なんだろうか。手に入れなられないものほど、愛おしくて欲しいと望んでしまうのだろうか。
視線を十四郎の目に戻したいのに戻すことができなくて、ただただ私の手に触れた彼の手に視線を向ける。離さなくてはならないその手も、やはり私には振り払うことなんて出来ない。

「俺はお前が好きだ」
「…ずるい、今更」

本当に今更、どうして、ずっとずっと言わないようにしていた言葉を言ってしまうのだろうか。私の心はいつだって、意味がないと知りながらも十四郎しか見ていなかったというのに。

「顔、あげろ」

繋がれていない方の手が私の頬を撫で、そして顎に移動する。やっと見ることができた十四郎の瞳は悲しそうだった。ねえ、十四郎。と、言いたかった言葉は十四郎に飲み込まれ、代わりに私と十四郎の吐息が混じる。
お酒とほのかに香る十四郎の匂いに、私の頭はくらくらとしてしまう。これはさっき飲んだお酒の所為ではないのだろうと考える暇もなく、十四郎は角度を変え何度も何度も唇を重ねた。柔らかい十四郎の唇と、熱っぽい舌。時折舌を吸う十四郎に、私も懸命に応える。
繋いでいた十四郎の手が離れ、私の着物の袷にかけられる。外気にさらされたことで小さくあがった私の声は、十四郎の深い深いキスで声ともいえないものへと変わった。
そっと唇が離れ、どちらのともわからぬ唾液が口の端を伝うのがわかる。

「私も、愛しています」

言った瞬間涙があふれて止まらない。ずっと言いたくて、でも言うことが許されなかった言葉。
ぼやけた視界で確認できたことは十四郎もまた、目を潤ませているということ。十四郎と心を通わせることが出来たというだけで、私はたまらなく嬉しかった。

「あっ」

袷をさらにはだけさせ、十四郎の指が鎖骨から乳房へと移動する。左手で強く揉みしだいて、もう片方の先端を口に含む。思わず零れる甘ったるい声に、自分で恥ずかしくなる。
器用に動きまわる舌先に、私はされるがまま。
そのまま左手が下へ下へと降りてゆき、太ももから徐々に上へ上へと移動する。くすぐったいような気持ち良いような、どちらともとれぬ感覚に身をよじらせながら、私は十四郎の着物を掴む。

「悪い…もう、いいか」
「う、ん」

苦しそうにそう言った十四郎が何故かとても可愛く思えてしまう。十四郎のものが私のそこへあてがわれ、少し緊張で身を強張らせていると、自分だってギリギリのくせに、十四郎はもう一度長めのキスをしてくれた。


「ずっと、お前を愛してる」
「私も、ずっと…」



月明かりにてらされた


:)111028
リハビリついでにちょっとエロ
政略結婚的なものです

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