銀魂 小説 | ナノ
時に恐ろしく
そっと背中に手を回せば、一気に視界が彼で埋め尽くされた。こんなことを望んでいたわけじゃないのに。もっと、もっと、私たちは分かり合えていたはずなのに。
「銀、ちゃん…」
「なんだよ」
私たちもう潮時だよ、言いかけて言葉が詰まる。言わないと伝わりはしないのに。このままでいるなんて、お互いがダメになるだけだってわかってるのに。
それなのに言葉を紡ごうとした唇を、今は固く噛み締める。鼻の奥がツンと痛んだ。
「なんだよ、どーした」
その問いに、目を固く閉じてふるふると首を振ることしかできない私に、銀ちゃんは武骨で温かい手で頭をグシャグシャと撫で、そして抱き寄せた。
皮膚から直接伝わる体温が心地よくて、銀ちゃんの匂いが心地よくて、私はただただ成すがまま。銀ちゃんの腕の中に収まるだけ。
「泣くなよ、」
目じりに溜まっていた涙をそっと親指で拭って、背中を優しく擦ってくれる。温かくて、優しくて、大好きな銀ちゃんはすぐ近くにいるはずなのに、でもまたすぐにどこかへいってしまう。それが堪らなく怖くて、堪らなく寂しいんだ。
「ねえ、」
「ん」
「どうして銀ちゃんは…」
最近会っても昔みたいにただ一緒にいるだけじゃすまないの?
とうとう言わんとしていた言葉を言ってしまった。ずっと伝えたくて聞きたくて、それでもやっぱり言えなかった言葉を。
私は銀ちゃんとならどんな時間でも楽しかった。神楽ちゃんの食費で愚痴る銀ちゃんも、新八くんのオタク話を笑いながらする銀ちゃんも、それでもやっぱり二人のことを大切にしている銀ちゃんも。話をするだけで、傍にいるだけで楽しかったのに、手を繋ぐ事さえぎこちなかったはずなのに。
そんな銀ちゃんとの時間は、今はもうない気がして。
一度拭ってもらったはずの涙は止まらなくて、流れ落ちてはこめかみ、髪の毛、そしてシーツへと伝ってゆく。
銀ちゃんはというとすごく哀しい顔をして、私から目をそらした。やっぱり違う、こんな顔をしてほしいわけじゃないのに。
時に時間も慣れも恐ろしく
:)090614
突発的なリハビリ