銀魂 小説 | ナノ


その気持ち雨のち曇り


ああわかっていたのに、それなのに。それなのに我慢が出来なかった自分はなんて馬鹿だったんだろう。わかっていたのに。こうなるって。


「あーあ、まあドンマイっしょ」
「他人事だと思って…」


だってあの娘すんごいかわいいじゃない、もうなんて言うの?私たちなんかとは次元が違うって感じ?そういえばこの間タレント会社からスカウトされたらしいよ、あーモデルだったっけ?まあどっちでもいいけど凄いよねー、ちょっと街出ただけでナンパとかマジ半端ないらしいしさ、まあそんな女の子のこと好きになるのなんて退以外に五万といるわけで、あっさりさっぱり!それが良い男の基本だよ、ねえ土方!
延々と長ゼリフを述べたこの女はその隣の土方さんに同意を求めた。土方さんは曖昧に言葉を濁したような返答をしたけれど、俺の隣にいた沖田さんははっきりきっぱりと、まあ山崎じゃ無理だったってことでさァ、なんて言って笑った。畜生、悔しいけれど言い返せないところがまた悔しさを倍増させる。


「と、言う事で今日は山崎の失恋記念日ってわけだ」
「おっ!いいね失恋記念日!」
「人の傷口抉ってそんなに楽しいですか」
「おっとー山崎がやさぐれてきやしたぜィ」
「そりゃあここまでされちゃそうなるだろ…」


失恋記念日だかなんだか知らないが、もうこいつら人の不幸を楽しんでいるようにしか見えない。つーかマジ楽しんでるよね?沖田さんなんて生粋のドのつくSだし、人の傷口は抉るものだと教わったに違いない。ああ、親の顔が見て見たい…でもお姉さんの方は凄い綺麗なんだよね、つーか普通に優しいし、まあ少し変わってるけど…。まああれは仕方ない、あんな弟がいるんだ、少しぶっ飛んでないとやっていけないんだろう。
勝手に一人自己完結をし、視線を戻せば前方に三人の姿が見えた。どうやら俺がいろいろと思い悩んでいる間にどんどん進んで行ったらしい。まああの人達が待っているだなんてこと、あるわけないのだけど。




「ザッキー!今日は土方のおごりであんたの慰めパーティーしてあげるから早くこーい!」



ちょっ、なんで俺なんだ…!なんて言う土方さんを華麗にスルーする二人はそのままダッシュで土方さんの鞄を奪って走っていった。それを慌てて追いかける土方さんは俺をちらっと見て、早く来いよてめえも!そう言って本気で追いかけ始めた。そんな三人の様子を見て、自然にさっきまでのどん底の気持ちが少しだけ、和らいだような気がした。




その気持ち、雨のち曇り
でもこういう時、こんな馬鹿みたいな仲間がいることが、少し嬉しかったりする。



「さーて退のことを慰めようパーチーはじめーい!」
「不甲斐ないモテない、そしてジミーな山崎を励ましてやろうってー俺らの真心つまったパーチーでさァ。存分に楽しめィ」
「山崎てめーはドリンクバーにしろ、つかそれ以外なしな」
「すいまっせーん!ここにある全種類のピザお願いしまーす!」
「…あの、ドリンクバーで」
「まァでもな、」
「いくらジミーなお前でも」
「私達は退のこと、好きだからさ」
「…え、」

(まあいろいろあったわけだけど、こんな不意打ちサプライズをしてくる三人が)(今は彼女とかそんなのよりも大切なのかな、なんて…)
(え、負け惜しみ?ん、まあ青春って難しい!)





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