「室長、」 「何?」 「ひとつ良いですか」 「どうぞ」 「今日も残業ですか?」 「うん」 「・・・」 「どした?」 「今日って」 「火曜日だけど」 「・・・」 「24日だよ」 「・・・」 「あ、クリスマスイブって事?」 「そうです」 「めでたいね」 「それを言うのは正月です」 「あ、そうか」 「・・・」 「ちょ、何か怖いんだけど!?」 「今日くらい定時であがらないんですか」 「連休明けは仕事が詰まってるんだよね」 「・・・」 「気にせず帰って良いよ」 「・・・」 「帰らないの?」 「仕事します」 「何で?」 「何でもです」 「てゆーかさ?」 「何ですか?」 「ココは予定無いの?」 「ありません」 「即答?!」 「迷う余地も無いですから」 「クリスマスだよ?」 「はい」 「イブだよ?」 「はい」 「寂しすぎやしないか?」 「そう言う室長は?」 「う。」 「クリスマスですよ?」 「分かってる」 「イブですよ?」 「有ったら此処にいるか?」 「そうですよね」 「そうだよ」 「・・・今の会話、かなり切なくなかったか」 「非常に切なかったですね」 「他のやつらはどうした」 「帰りました」 「そうだった」 「そうですよ」 「デートかなぁ」 「デートですかね」 「良いねぇ」 「良いですね」 「・・・」 「・・・」 「・・・まずはディナーから」 「一流ホテルの最上階で」 「夜景を見ながら」 「シャンパンで乾杯」 「さりげなくプレゼント」 「大輪のバラを添えて」 「クリスマスケーキは」 「部屋にサプライズで」 「イブ限定のスイートルーム」 「甘い甘い時間を堪能あれ」 「ココ」 「はい」 「切なすぎるだろ!?」 「まさかの大奮発コースでした」 「想像力有りすぎだ!」 「お互い様です」 「・・・そうかココ」 「え?」 「経験済みと見た」 「残念ですがまだです」 「マジで妄想ってか」 「来たるべき日のために」 「ほぉ」 「そう言う室長は?」 「ん?」 「無いんですか」 「ノーコメント」 「・・・」 「ちょ、怖いよココ」 「ボクは答えましたが」 「だから、ノーコメント」 「・・・経験させて差し上げましょうか」 「ノーサンキュー」 「・・・・・・」 「ノーリアクション?!」 「・・・・・・」 「怖いって!」 「・・・まぁ、この時期は忙しいんだよな」 「そうですか」 「だから何となーく同期とか残業組で飲みに行ったりね」 「毎年?」 「悪かったな」 「別に悪くは無いですが」 「じゃあ何だ?」 「今年はどうするんですか」 「うーん」 「残業組で飲みですか」 「そういや今年は誘いが来ないな」 「そうですか」 「なので寂しく一人でケーキのコース、だな」 「そうですね」 「・・・」 「室長?」 「ココは?」 「はい?」 「どこも行かないの?」 「寂しく一人で以下同文、です」 「何で?」 「何でもです」 「・・・」 「・・・」 「ココ」 「はい」 「かなり切ないと思わんのか」 「かなり切ないですね」 「話題変えよう」 「いきなりですね」 「ダメか」 「良いですけど」 「じゃあ・・・」 「・・・」 「ココって誕生日いつ?」 「・・・10月29日ですけど」 「まぁそんな顔だよね」 「どんな顔!?」 「そんな顔だよ」 「・・・・・・」 「でもそれだと遅いな」 「え?」 「サニーは9月だったっけ?」 「確か前半です」 「じゃあ早過ぎるか・・・けどそっちのが有力かなぁ」 「何がですか」 「何って・・・クリスマスベビー率?」 「えっ?」 「だってクリスマスって、プロポーズの成功率とか高くない?!」 「そうですかね」 「それでなくてもムードに酔いそうじゃない?」 「それは確かに」 「授かっちゃったりしそうじゃない?」 「有りそうですね」 「つまり、」 「20数年前の今日、二つ目のプレゼントとしてサニーが発生したって事ですね」 「発生って」 「生まれるのは先ですから」 「そうだけど」 「何ですか?」 「もうちょっと言い方があるだろ」 「例えばどんな?」 「『天使が舞い降りた』とか」 「サニーですよ?」 「毒吐いたな」 「当然吐きますよ」 「ま、ココさ、明日聞いてみてよ」 「『サニーのご両親って出来ちゃった婚だった?』」 「それ直球すぎやしないか?!」 「なら何て」 「『ご両親結婚何年目?』とか」 「サニーと同じ年か、って事?」 「そう」 「もし当たってたら?」 「真実を初公開!そして本人の反応は如何に」 「反応・・・」 「どんなだと思う?」 「『マジ?!きよしこのオレ!』ですかね」 「・・・ありえんほどポジティヴだな」 「サニーですから」 「つーかココ、今のモノマネやばくない?」 「サニーですから」 「そういう意味じゃなくて」 「どういう意味ですか?」 「・・・まぁサニーだから良いか」 「ココ?」 「はい」 「帰るか」 「えっ」 「ケーキ売り切れると嫌だし」 「それは無いんでは」 「そうかな」 「良くも悪くも飽食の時代です」 「そうか」 「そうです」 「じゃー仕事するか」 「どこか行かないんですか」 「どこも行かないけど」 「誘いは無いんですか」 「何故か今年に限って」 「不思議ですね」 「嫌われたかな」 「それは無いんでは」 「そう言えばサニーの続きなんだけど」 「はい」 「子供の誕生日って、夫婦どちらかの誕生日に近い事が多いんだって」 「そうなんですか?」 「まぁ根拠はないけどね」 「はぁ」 「サニーの、今日の動向によっては・・・」 「よっては?」 「実証してくれる事をちょっと期待」 「え?」 「サニージュニア」 「・・・」 「ココ?どした?」 「さっきの話ですが」 「うん」 「サニーだと早過ぎで、ボクだと遅いんでしたよね」 「そうだけど」 「イヴで計算すると誕生は10月初旬から中旬ってところですよ」 「・・・計算した?」 「最近のWEB情報は素晴らしいです」 「そ、そうか」 「はい」 「・・・で、何だっけ?」 「ボクも実証できそうかな、と」 「何が?」 「何って、」 「・・・」 「・・・」 「ココ、帰って良いよ」 「何ですかその顔は」 「ゼヒ実証してほしいと言うか」 「はぁ」 「ワタシも帰った方が良いかなとか」 「へぇ?」 「若干身の危険を検知した風な」 「無駄に高性能ですね」 「褒め言葉か?」 「はい」 「・・・」 「・・・」 「だから切ないんだってば!」 「ボクだって切ないですよ」 「二人して余りものっぽいぞ」 「事実余りものなんです」 「余りものが不毛な会話を」 「振ったのは室長です」 「もっと頑張ろうよココ」 「室長こそ」 「くそぅ・・・誰か誘ってくれたって・・・」 「じゃあ室長、」 「良いや。帰ろう、ココ」 「え。」 「だから帰ろうって」 「・・・家に?」 「ワタシはね」 「・・・・・・」 「ココはどっか寄ったりしたら?」 「どこかに寄っても、甘い甘い何かは実証しませんが」 「ココだったらどなたかと実証できるだろ」 「実証『できない』んじゃなくて、『しない』んです」 「おっとイケメンの強気発言が出た」 「・・・」 「まぁ確かにそうだよなー」 「・・・」 「しょーがないな帰るか」 「・・・」 「どこのケーキが良いかなぁ」 「・・・」 「ココもケーキ買う?」 「買ってあります」 「え。」 「冷蔵庫に入ってます」 「・・・マジでか」 「限定、って触れ込みだったのでつい」 「そういうとこホント用意良いな〜」 「・・・プレゼントします」 「えっ?!」 「ホールですし」 「ココは?」 「いいです」 「どうして」 「流石に一人では食べきれませんから」 「何で買ったんだ?!」 「つい、です」 「つーか、元気なくなってない?」 「・・・普段どおりです」 「そう?」 「そうです」 「でもさココ・・・」 「はい」 「流石にワタシもホール1個はきついよ」 「・・・そうですね」 「食べてこうか」 「え。」 「半分ずつ」 「良いんですか?」 「良いも何も、ココのじゃん」 「・・・そうでした」 「そうと決まれば準備!包丁ってあったっけ?」 「見た事無いですが」 「フォークはあるよね」 「はい」 「じゃ、両端から食べていけば良いか」 「・・・」 「誰も見てないし」 「・・・はい」 「じゃあ早速!」 「あ、コーヒー淹れますよ」 「ホント?さんきゅ」 「ちょっと待ってて下さい」 「つーかココ?」 「何ですか?」 「おなか減ってただろ」 「えっ?」 「だって食べるって言った途端にテンション上がったじゃん」 「それは・・・」 「『ボクの部屋で食べませんか?』って言えると思うヤツ!」 「ムリ無理ムリ無理!ココにそんな度胸無いし!」 「大体あの室長が『うん』って言う訳ねぇだろ」 「だよな〜」 「み、皆さん何の話ですか?」 「いやよ?今日冷蔵庫にケーキがあってだな・・・」 「・・・で、ココさんがいない訳ですね」 「そうだし」 「でも、ゼブラさんとトリコさん、良くガマンできましたよね」 「食ったら死んだからな」 「え゛」 「小松、ココはキレると怖いんだぜ」 「そ、そうなんですか?」 「あ、サニーさん?大丈夫ですか?」 「もーマジありえんし」 「鼻赤いぞサニー」 「さっきからくしゃみ止まんねーし」 「うつすんじゃねーぞ」 「風邪じゃねーし!」 「あ、じゃあ誰かウワサでもしてるんですかね?」 「モテるって辛いなぁ」 「マジいい迷惑だし!きよしこのオレが台無しだし」 「何ですかソレ?!」 あとがき→ |