その後遅れて帰ってきたルカとイリア。どうやら喧嘩でもしたらしく二人の間には気まずい空気が流れている。原因は何か知らないが、イリアがなにか言おうとした時ルカが慌てて口を塞いでいた様子から、彼が何かしでかしたのだろう。珍しいこともあるものだ。

情報収集の結果、記憶の場のことは王墓以上の有力情報が見つからず、やはりそこへ向かうこととなった。

一方チトセの方もアシハラへ最近来た様子はないらしい。
そのためもう私が彼らと行動する理由はないのだが、スパーダに「もう少し付き合え」とだけ押し切られたので、彼らがアシハラを出るまで共にいることとなった。





「そこの異国の者!この神聖な墳墓に何用か!」
「ええい!ふらちな異国人!王の呪いを受けてしまうぞぉう?」


王墓には予想通り守り役がいた。独特のカブキメイクをしてそれ様に喋るところは、他国の人間には少々刺激的ではないだろうか。


「異国の文化に興味があって参りましたの。中を拝見出来ませんか?」
「でぇい!入る事、あ、まかりならぬ〜!!」
「ここは立ち入り禁止だ。観光なら町の方を見て回られるがよい」


アンジュが丁重にお願いするが、守り役の二人は首を縦に振らない。


「それにそちらの方はアシハラの民だろう。ならばここがいかに神聖な場所か分かっているはず」


自分のことか、と指で示せば深く頷かれてしまう。
きっと私から彼らに言ってくれということなのだろうけど、生憎そんな気はさらさらない。


「へぇー、そう。ああ、もうっ、話の通らない墓守っ!こんなにカワイイあたしが中を見たいって言ってんのに!ケチ墓守!」
「陰口は本人を前にして言わない方がよいと思うぞ、異国の娘」
「とにかく、ここは通せん。あきらめるんだな」


イリアのよく分からない説得、というか悪口の連呼も軽く流されてしまう。

いよいよ本気で忍び込む方向に考えなければならなくなってきた時、「アマードボアが出たぞー!!」と言う男の声と耳をつんざくような女の悲鳴が聞こえてきた。


「まぁた、出たか。最近は多いな…」
「なあ、何が出たって?」
「アマードボアっていう野獣だよ。この島が沈み始めたせいで、住処が狭くなって来ておってな。こうして人里に現れて人を襲うようになったのさ」
「退治しないの?」
「うぬぅ、この町には我等をおいて屈強なる者、他にあらじぃ!」
「くちおしやぁ!アマードボアの暴れる様を見守るのみでぇい」


墓守達の悲痛な叫び――。
既に国土の三分の一が沈んでしまっているアシハラには、他国からの傭兵を雇うゆとりすらない。各々が家に閉じこもり自衛するしかない、と。

嘆く墓守達とは逆に、アンジュの目がチャンスとばかりに光る。


「こういうのはどう?わたし達が退治する代わりにお願いきいてもらえません?」
「そんな行きずりの旅人に退治出来るようなら苦労はない。でも、試したいのなら止めないけどな」
「素直にお願いします、というのも大人の態度なんですよ?交渉は成立ね」


まずは詳しい話を聞く為、町にいるジロチョウという人を尋ねることとなった。



その後墓守に言われたとおりジロチョウに会いに行った。正直なところジロチョウというのは一応この国の王なのだが、彼は護衛も連れずにぼーっと海に沈んだ町を眺めていた。

話し合いの結果、退治の礼に墳墓に入れてもらえることとなった。理由を聞かれたさい、ルカが咄嗟に趣味だと言い皆にドン引きされたが、それがジロチョウには良かったらしい。まったく不思議なものである。

アーマードボアは十体規模の群れで行動しているらしい。七人で十体――そう多くはない数字だ。それに私達は転生者、簡単に倒せるはず。なのに退治に時間がかかったのは、その対象が予想外の大きさだったからに違いない。

そして約束の条件を果たした私達は、墓守にしぶしぶと言った感じで王墓への立ち入りを許された。



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