私はあのとき父に手を引かれ、■■■■■■■■に乗った。
身を隠しながらの行動。父の険しい表情。家人を誰も連れず、二人だけの旅。おかしな点はそれだけじゃなかったが、はじめて見る帝都の外、結界の外の世界に浮かれていて周りを顧みることなんてしなかった。
船には沢山の人がいた。大人から子供まで様々な人が。そしてそんな彼らを■■■■■■■があそこにはいた。■■■■というギルドらしい。
「お嬢さん、そんなに海が好きなのか?だってさっきからずっと見てるだろ?俺も海が好きだから気持ちはわかるが……そろそろ中に入ったほうがいい、風邪をひく」
優しく私に声をかけてくれた■■■■■もその一人だった。不器用に笑って私の頭をひとなですると、彼は■■■■■■■■の元へ行ってしまった。
■■■■■■と呼ばれたその■■は明るい笑顔を彼に向けていて、遠くから見ている私にも■■の人柄の良さがよくわかった。
しばらくそうして見ていると■■も私に気づいたのか、その笑みをこちらに向けて手を振ってくれた。それがなぜか無性に恥ずかしくて、私は慌てて船内に駆け込んだのだ。
「おやおや、こんなに冷たくなるまで海を見ていたのか。………すまないね、突然帝都から連れ出したりして。あいつは今冷静じゃないんだ、時間さえおけばあいつもまた昔みたいに■■■■■■」
父の話を聞いていたはずが、知らぬ間に寝ていたようだ。起きると隣に父の姿はなかった。
船室に転がって父の帰りを待っていたが、不意に胸が苦しくなってきた。乾いた咳がとまらないどころか、血が混ざっている。頭も割れそうに痛くて、父を探しに外へ出ようとよろよろと扉に手をかけた。
そのとき扉を突き破ってなにかが飛び出てきたのだ。赤い液体に濡れたそれは人のようで人でなかった。人の形をしてはいるが、■■■■■■■■■■■■■■■■■。
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■■■■■たが、そこにも父の姿はなかった。変わりに悲鳴と血の舞う地獄のような光景が広がっていた。
「あああああああああ!」
「痛い痛いよおかあさん、たすけて」
「なんで、こんなひどい……いやだ、いやだ!」
「誰かたすけて、苦し……」
そこにはたくさんの人が集まっていた。そのどれもが身体の一部が■■のようになっていたり、■■の身体の一部に人間の部位がかろうじて残っている状態だった。
姿の見えない父がそのどれかだなんて考えたくも■■■■
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「き み だ け で も ど う かーー」
宙に浮いた体はすぐに冷たい海へと叩きつけられる。
どう泳げばいいかなんてわからない。どうにかして海から上がろうと手を伸ばしても、私の手を掴みあげてくれる人なんていない。息をしたくて顔を水面から出しても入ってくるのは波ばかり。
苦しくて助けを呼ぼうとしても、逆に水の侵入を許すばかりでどんどん苦しくなってくる。
「だれか……たす■■……」
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その人を見たとき、私は救われたと思った。私は生きているのだと。
ずぶ濡れで着ているものもぼろぼろになった私をぎゅっと抱きしめてくれて、安心できる笑顔を向けてくれたのだ。
私もその人に抱きついてわんわんと泣■■■■■■■■
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「■■■■■■■てきてどうするつもりだよ」
「よく考えてみろよ。親はガキを探してるはずだ。こいつの身なりの良さといい、いくらでも金を出すはずだ。そうじゃなくてもいくらでも使い道はあるはずだ」
「それもそうだね」
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酒に酔った男から剣を奪い、その背中に突き立てるのは簡単だった。男の呻き声と女の悲鳴がひどく耳障りで、握った剣の感触は二度と思い出したくないほど不愉快だった。
剣を引き抜くと血を吹き出しながら倒れる男を呆然と眺めていると、女はそんな私になにかを叫びながら酒瓶を投げつけてきた。
痛む額と血に塗れた剣を抱えて、私はひたすら走った。
足の皮膚が破れて血が出てきた。それでも私は走った。転んで膝を擦りむいた。それでも私は走った。お腹が減ってもう地面に倒れたかった。それでも私は走った。疲れてもう目を閉じてしまいたかった。それでも私は走った。
ただ生きたかったからーー。
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