Bloody Mary
episode.03
天気予報は晴れるでしょうと言っていたから、
薄着で仕事へ出かけた。
たまたま立ち読みした雑誌の占いで
今月はかなりの強運で怖いものなし、と記載されていた。
可愛い期待の新人が入りました!と誘われたので
馴染みの店で、久しぶりに遊んでみた。
蓋を開けてみれば
天気予報は晴れるでしょうと言っていたのに、
曇りどころか通り雨まで降って、ずぶ濡れになった。
たまたま立ち読みした雑誌の占いを信じて
パチンコを打ったら大負けした。
可愛い期待の新人が入りました!と誘われたのに
登場したのは、見た目は可愛いミスターレディだった。
どうやら自分は、とてもツイていないらしい。
そう、分かっていたのに、
いやいや、そんなことはない。と。
何故か雀荘へ自ら赴き、
その場限りのメンバーで卓を囲んでしまったのか。
「わりぃな、兄ちゃん。」
正面に座る男がニヤニヤと下衆な笑みを浮かべる。
ガリガリと後ろ頭をかきながら、谷村はほとんど灰になった煙草を吸殻で山を作っている灰皿に、押し込んだ。
ニコチンと時折つかんだ手応えの感覚とで、無理矢理に覚醒させた脳はいい加減、疲れたようで急な眠気に襲われた。
そういえば、入店した時は確か、
日付が変わるか変わらないかの時間だったはず。
ブラインドの隙間から漏れる朝日を横目に、谷村はため息をついた。
ツイていない時は、ツイていないのだ。
消したばかりなのに、直ぐにまた脳味噌がニコチンを摂取したがるものだからポケットからそれを取り出す。
しかし、取り出したソフトケースの中が空であることを思い出すと、
グシャリと手の中で握りつぶしてゴミ箱に向かって投げた。
ぐしゃぐしゃになったそれは、プラスチック製のゴミ箱の側面に当たって跳ね返ると、
たくさんの土足で踏み荒らされ、副流煙を吸い込み続けてくすんだ臙脂色の絨毯にポトリと着地した。
どう足掻こうとも、ツイてない。
そして、引き際を見誤っていた事をようやく認識した。
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