Deployment Girl meets Boy



学校というところは規則とかそういうものが大好きで、
少しもそこからはみ出してはいけないのだ。

だがしかし、そうされるとなると、
むしろはみ出したくなるという天邪鬼な一面が頭をもたげてしまって仕方がない。


規定外の鞄だったり、
短すぎるスカートの丈、
開けてはいけないピアスホール。

痛むのが嫌だし寧ろ黒髪の方がクールだと思っているから髪は染めていないけれど、

指摘を受けようと思えば、いくらでも受けられてしまう。



不運にも、今日は頭髪検査があって、
髪の色はクリアしたものの、目ざとい担任につけられたピアスホール。

担任の桐生は、ため息まじりに「ピアスは進路によっちゃ嫌われるぞ」と透子にだけ聞こえるように漏らし、
手元の名簿の透子の名前の横の「問題なし」と書かれたチェックボックスにマークされた。



下校中に、学校からは少し坂を下った辺りで、
まだ最寄りの駅までは、背中に汗をかいてしまうくらいは歩かなくてはならない距離に位置するコンビニの駐輪場で

自転車にまたがる馬場を見かけた。


「校則違反男子をはっけーん」


自分を指差す透子に気づいた馬場は、
おう。と悪気もなく短く答えた。


「頭髪検査、なんか引っかかった?」

「腰パンしてたらさ、朴にすごい事言われた。」

「何て?」

「『貴方は制服すら、まともに着れないの?それとも、引き摺り下ろして欲しいのかしら?』だって。参っちゃうよ。」


似ていないけれど、特徴をよく捉えたモノマネが可笑しくて思わず笑う。
バツが悪そうな顔をしていた馬場も透子の笑顔につられた。


「馬場ちゃん、家近いんだっけ」

「チャリで30分か40分くらい。」

「結構あるね」

「でしょ。だからトレーニングを兼ねて、チャリ。」


なんとなしに、言い訳に使っている常套句を口にすると、ニヤリと透子が笑った。


「成る程。そういう事なら仕方ない。私自ら馬場ちゃんの負荷となってやろうではないか。」


やれやれと言いつつも、肩掛けの鞄を無理やり背負い直すと、透子は自転車の荷台にまたがった。

急な重みに、うまくバランスをとりながら馬場がため息をついた。


「ったく、現金な奴。駅まででいいのか?」

「折角だから放課後デートしましょ。どこか適当な所に私を連れてって頂戴。」


短くない付き合いから、こう言う妙に機嫌の良い透子は言い出したらきかない性格なのは承知していた。

何の躊躇いもなく、透子の腕が馬場の両腰あたりを掴む。
馬場はそれを確認すると、「りょーかい」と呟いてペダルを踏み込んだ。



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