「やだ!俺はマックがいい!」
「っせーな……目の前にモスがあるんだからモスでいいだろ」

俺と染岡の言い争いを風丸と円堂が、またか、というように見てくる。まただ、悪いか。

「……どうしても、って言うなら二手にわかれるか?俺も円堂もどっちでも構わないからさ」

風丸の提案は中々に魅力的だが、それだと四人でここまで来た意味がなくなる。

「それは嫌だ!」
「じゃあ大人しくモスにしろ!」
「だって期間限定バーガー今日までだし!」
「……だったら、とりあえず今はモス食べてさ、帰りにマック寄れば?」

円堂の神の一声に、俺は大人しく従った。



「半田、そんなに食うのか」

俺の注文を聞いて後ろに並んでいる風丸が呆れた顔をする。育ち盛りなんだから、という言い訳は普段あまり食べない風丸には理解出来ないだろう。

「まあ、運動してるから別にいいのか」

俺の沈黙をどうとったのか、風丸は横にずれた俺をちらりと見て自分の注文をはじめた。アイスコーヒーとオニオンリング、のみ、って絶対男子中学生としておかしい。

席に戻ると、円堂と染岡は既に座って食事をはじめていた。二人とも俺と同じようにお盆に山盛りで、風丸はそれを一瞥して「なんか見てるだけでお腹いっぱいになるな」と、うんざりしたような表情をした。

俺が染岡の隣に、風丸が円堂の隣に座るとすぐに風丸は円堂のコーラに手を伸ばし飲み始めた。いつものことなので、円堂は苦笑するだけで何も言わない。円堂曰く、風丸は大人ぶりたいから飲めないのにとりあえずアイスコーヒーを注文するらしい。それをからかうと痛い目に合うことは分かりきっているので俺も黙っておく。今回のメンバーだと、おそらく最後にアイスコーヒーを処理するのは染岡だろう。
ふと考え、風丸の真似をして染岡のジンジャーエールを飲もうとすると右手をはたかれた。……痛い。

「なんだよ!痛いじゃん!」
「お前が何も言わずに盗ろうとするからだろ……」
「だってホットココア熱いし!」
「なんで夏場にホットココア頼むんだよ!馬鹿なのか?」
「違う!アイスココアが無かったから」
「ココアを諦めろ!」
「でも、」
「あー、'でもでもだって'うぜー」

悔しいが言い返す言葉に詰まり、風丸と円堂の方を見る。だが、俺たちなんて視界に入っていないかのようにポテトとオニオンリングを交換していた。しかも、あーん、って!学校では普通なのにこの二人はどうしてこう校外ではラブラブっぷりを押さえられないのだろうか。

「染岡!」
「なんだよ」
「俺たちもラブラブしよう!」

怒鳴ってばかり、しかも大抵俺が一方的に、でなんだか無性に悲しくなってきた。だからこその提案だったのに染岡は「は?」という顔を崩さない。もっと何かあるだろ!照れるとか!いろいろ!

「なんだ、つまりお前は『あーん』とかしたいのか?」
「してあげてもいいけど」
「何で上から目線なんだ」

ちらちらと円堂と風丸を見ながら染岡は面倒そうに俺にそう言う。俺一人が必死みたいで馬鹿らしいけれど、たまには恋人らしいことをしてもいいじゃないか。

「とりあえずジンジャーエールもらうな」
「何で、」
「間接キス、じゃん」
「はあ?」

とか言いながら、俺も染岡も真っ赤になってるの。こんぐらいで、ばっかみたい。
そう思いながらも火照りはなかなか収まらず、いつの間にかこっちを見ていた風丸の「クスッ」という笑いで目が覚めた。

「なんか、可愛いな、お前ら」

余裕そうな風丸が恨めしい。円堂までにやにやしていてなんだか余計恥ずかしくなってしまった。





*
「じゃあ、俺たちこっちだから」
「え、風丸そっちじゃないんじゃ…」
「風丸は家に泊まるの!」
「へ、へぇ」
「じゃあな。染岡、ちゃんとマックまでついていってあげろよ」
「……分かったよ」
「よし、じゃあな!また明日」

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