澪漂


お日様園に戻ると、プロミネンスの皆が集まっていた。……いや、一人足りない。

「なあ、ヒー……、いや、茂人は?」

どうしていないのか疑問に思い近くを見渡しながら尋ねるが誰も答えてくれる気配はない。やはり、何か問題でも発生したのだろうか。

俺の嫌な予感、はよく当たる。思えば昔、親が死ぬ前にもこんな感じがしたような気がする。あの時は隣に茂人が居たけど、今は居ない。

杏は先ほどと同じように含みをもった視線をこちらに向けているし、他も同じようなものだった。そうじゃなければ目を合わせてすらくれないか、だ。

かなりの沈黙のあと、二、三人が耐えきれなくなって部屋を出た。あまりの空気に俺はそれを問い詰めることすらできなかった。
それから、数男が意を決したように俺に近づいてきて言う。

「バーン様…晴矢、重大な知らせがあるんだ」

バーン様と言ったとき隣の華が小突いたのも、いつもの空気なら笑っていただろう。重い雰囲気は続いたが、数男はそれ以上話す気はないようで、呆れたようにして結局杏が続きを述べた。

「茂人の容態が危ないらしいわ」

「は…危ないって急に…エイリア石の影響で?」

元から病弱だった茂人だから、無理をし過ぎたのかもしれない。しかし、杏から返ってきた答えは「逆よ」、だけだった。意味が分からない。
とにかく茂人の所へ、そう思い玄関へ向かうが夏彦に腕を引いて止められた。

「やめとけ。何が出来るって訳じゃないんだ」

そういう夏彦を力任せに振り切り、俺は止める声も聞かずに駆け出した。


11:Apr:4th/top