最初に言っておきます…お題詐欺ですいません;
こう…深い部分で感じ取っていただけたらうれしいです…!






窓際の前から二番目。冬場の今は寒く、しかも前の席は空席なので非常に授業中当てられやすい。それでも席替えをしたくない、と思ってしまうのは多分後ろの席が風丸だから。今は空いている風丸の席を見て思わずにやにやしてしまった。

そんな昼休み。(次の古典は小テストである。)



「あれ、風丸ってブラック飲めたっけ?」

自販機から戻ってきた風丸にそう声を掛けると、何故だか不機嫌そうな顔をこちらに向けた。

「飲めない、けど、飲めるようになって見せる」

真剣にそう言って、「大人だからな」と続けた。意識的か無意識かは知らないが最近の風丸はそれが口癖だった。
俺は高校生なんてまだまだ子供だと思うんだけど。

「へぇ」

軽く相づちを打つと、風丸は頷いてちびちびとブラックコーヒーを飲み始めた。けれど文字通り苦い顔をして、三秒ほどで口を離した。

「あれ、もう終わり?」

意地悪げに俺が聞くと、風丸は小さくこちらを睨み、再び口を付けた。が、すぐに諦めたようで俺の方へ缶を押しやる。ちなみに俺はと言うと、ブラックコーヒーは中三の受験期に大変お世話になったのでその際克服した。風丸はそのことも気に入らないらしいけど。

「苦いよな?」

「苦いけど、それがいいんだよ」

一気に飲み干し、風丸の問いに答える。すると、気むずかしい顔をした風丸がまた言葉を重ねる。

「苦いのがイイ、って味覚マゾかよ」

「はぁ?…いや、辛いのに美味しい、とかもあるじゃん」

言ってから失言に気付いた。そうだ、風丸は辛いものもてんでだめなのだ。
要するに味覚がお子様。そんなところもかわいい、と思うのだが怒られるだろうから内に秘めておく。

「そんなことより、早く古文のノート写しとけよ。もう予鈴なるぞ」

やはり話題を変えたいのか、風丸はそう言いノートをシャーペンでつつく。慌てて写し始める俺の様子を見て満足したのだろうか。席を立ち缶を捨てに行く風丸を見ながらそう考えた。





「円堂、帰るぞ」

放課後。テスト期間の今は部活もなく、俺と風丸の間では風丸の家で勉強会というのが毎日の日課になりかけている。勉強会といっても実際は俺が苦手な文系分野を風丸に教えてもらってるだけに近いんだけど。

「あぁ、ごめん。ちょっと待って」

高校に入ってから部活もばらばらになってしまったから風丸と二人で帰る機会はほとんどない。テストは嫌いだけどテスト期間は少しだけ好きだ。
待たせないように手早く荷物を纏めて駆け足でドアの近くの風丸の所へ行った。


「初日は数学Bと日本史だから――とりあえず、今日は日本史やるか」

部活が無い分を少しでも補うために俺たちの帰り道はジョギングも兼ねている。二、三歩前を走る風丸の髪が短いのにはそろそろ慣れた。けれど、前より少しだけ広くなった俺と風丸の距離にはまだまだ慣れそうにもない。

だいたい一駅分。20分も走れば風丸の家に着く。実を言うと距離的には俺の家の方が高校には近いのだけれど、それでも風丸の家で勉強するのは幾つか理由がある。(第一に、俺の部屋は勉強できるような状態ではない。)

粗方荷物が片付くと、風丸は部屋の真ん中に折りたたみ式の机を置き、向かいに座るよう俺に促す。けれど、俺はそれに従わず風丸の横に移動した。何故だか分からないが、少しでも側に居たかったのだ。

それから、ぎゅっ、と風丸を抱き締める。全身で感じる風丸の体温と香りがとても心地よかった。

「おい、ちょっと…えん、ど…」

戸惑いながらも無理にやめさせようとはしない風丸だって、嫌ではないはずだ。その証拠に、一端手を離すととても不安そうな顔をした。

「大好きだ、風丸!」

言って笑うと、風丸も照れながら笑い返してくれた。

「ばか、俺も大好きだぜ」

溢れんばかりのいとおしさが胸をいっぱいにして、耐えきれずに俺は風丸に軽くキスをした。

正直に告白すると、帰り道からキスまでの一連の流れは毎日のように繰り返されている。幸せすぎて馬鹿みたいだと思う反面、どうしようもなく不安になることも最近は多い。風丸にそう言うと、「大人になった証拠だろ」、と言われた。


「そっか」

曖昧に笑ってから、俺はもう一度風丸にキスをした。(第二に、俺の母親はとてもお節介で、いつ部屋に入ってくるかわかったものではない)







――――
イナズマ高校生様に提出。

高校生って大人と子供の境目ですよね。大人になりたいけど子供でいたい、って誰もが思う…はず。

11:Mar:28th/top