あけおめ小説
/綱海と立向居の場合



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皆さんは迷子、という言葉をご存知だろうか。そう、迷う子ども、と書いて迷子。
子どもと書いておきながら大人が迷った場合にもこの言葉は適用される。これは、日本語の不思議の一つだ。

ところで、中学一年生と中学生三年生は子どもだろうか、大人だろうか。
おそらく、当人達は大人だと主張するだろう。しかし客観的に見るとまだまだ子どもとよんで差し支えない年齢である。

つまり、オレたちは迷子になっていた。


「つ、綱海さんが自信満々に歩いていくからぁ!」

「んなこと言ったって、初めてくる場所なんだぞ!迷子にくらいなるさ!」

「だったら早めに迷った、って言ってくださいよ……!何も待ち合わせ時間になってから言わなくても…。」

雷門に遊びに来たオレと綱海さんは円堂さん達に、いっしょに公園であるニューイヤーパーティーに行こう、と誘われた。
その公園自体には行ったことが無かったが、名物であるタワーは遠くからでも見ることが出来た。だから、案内を断ったのだ。だが、それが失敗だった。

ホテルから雷門駅までは何度か行ったことがあったので問題は無かった。綱海さんともつつがなく待ち合わせ場所で合流し、その後をついて行った。そうしたらこのザマだ。
綱海さんだけを責めるつもりはないが、もっと早く言ってくれたら対処のしようもあったものなのに。と、後悔しても今更遅い。
どうしますか、と尋ねようとして、今は後方に居る綱海さんを振り返って見る。するとその目は何故か輝いていた。

「見つけた!」

「えっ!公園ですか!」

綱海さんの指さす方向を期待を込めて見てみる。しかし、そこには公園どころかタワーすら見えない。
オレの言葉を否定するように綱海さんは首を振る。そして、とんでもないことを言った。

「神社だよ!神社!」

「えっ……オレたちが探してみるのは、公園、です、よ……?」

「いいじゃねーか!目の前に神社があるんだ!お参りしてくしかねーだろ」

「は、はぁ……?」

オレが綱海さんの言葉を理解する前に、綱海さんはオレの腕を掴んで神社の境内への階段を駆け上っていく。人混みに紛れたころ、やっと綱海さんは立ち止まったが今度は露店に目移りが止まらないようだ。相変わらずだなあ、なんて若干諦めてしまうくらいには綱海さんの行動力に慣れてきた。

はぁ、円堂さんたちに後で謝らないとなあ、と考えつつも、この破天荒な先輩には何時までもこのままで居てほしい、と神様に願った。




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