浮舟

小さい頃から当たり前にいっしょにいて、側に居るのが当然だと感じていたんだ。
宇宙人ごっことか、馬鹿げたことをしている間もそれは変わらなくて。いつまでもお前は俺の隣にいるんだ、なんて幸せな勘違いをしていた。





宇宙人ごっこが終わった日の朝。俺たちは検査、と称して病院に来ていた。最初は血を抜いたりいろいろ計測されたりしていたけど、思った通り最終的にはくだらない問答が一時間程度続いた。
適当に答えてドアから出ると、そこにはレアン――杏が腕を組んで立っていた。

「遅い」

杏の発した一言に、やっぱり、キャプテンだった俺の診断は長かったのだと理解した。だったら何故杏は俺を待っているのだろうか。…というか、待ってる、っていう雰囲気ではない。待ち構えている、というか、逃がさないようにしているような。

そんな俺の考えを他所に、杏は続けざまに言葉を紡いだ。


「ねえ、晴矢は、エイリア石についてどう思う?」

どうもこうも思ってねえよ、そう答えたかったが杏の目線は俺を射ていてとてもじゃないが堕落した答えなど言える状態では無かった。

「……みんな言ってるけどさ、やっぱ悪いもんなんじゃねーの?」

正直まだ整理がついていない。俺たちにとって、……少なくとも俺にとっては、すぐに理解できるほど小さなことでは無かったから。
それは杏も同じであるはずなのに、なにやらやりきれないような表情を崩さないままでいる。悶々と悩むような風の後、やっと口を開いた。

「そう――そうよね。ごめんね、晴矢。くだらないこときいて」

杏は俯いていた顔をあげ、小さく笑いながら言った。

「いや―、別に、」

「私、先帰ってるから。晴矢も着替えて早く帰ってきなさいよ」

ひらひらと手を振って去る杏の言葉で自分がまだ検査着のままであることを思い出した。

杏の向かった方向とは逆に廊下を進むなか、歯切れの悪い様子がひどく気になった。悪い予感がした。理由なく不安になった。



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続きます。


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