途中放棄文救済2好きだとか嫌いだとか、もはやそういうことは二人の間には関係がなくて。幼馴染み、という立場はそれ以上にも以下にもならなず、俺の恋心にとっては悲しいほど屈強な壁だった。せめて、せめて俺が異性であれば。そういったことは幾度となく考えた。けれど現実は現実として受け入れなくてはならず、幸せな夢から覚める度に深く落ち込むことにさえ慣れてきた。

だから全てを諦める事にしたのだ。


愛しい愛しい彼に差し出すのは慣れ親しんだ黄と青のユニフォーム。お前から貰った背番号とももうお別れだ。

「風、丸……。」

彼の人の声は靄がかかったようにうまく聞こえてこない。いや、聞こえてはいるのだろう。ただ頭に入ってこないだけで。
俺を咎めているのか、それとも悲嘆にくれているのか。恐らく前者であろう。もし後者ならお前もその程度であったと言うことだ。

「ごめんな、円堂」

俺の口はもう何度目かも分からない謝罪の言葉を紡ぐ。ごめんなさい、ごめんなさい。そうだよ、お前は何も悪くないんだ。悪いのは全部俺なんだから。
遠慮せずに俺を責めてくれ、罵ってくれ。そして、どうしようもないくらいに突き放してくれ。これ以上近くに居られる自信がないんだ。

「俺は、弱いから。」

「風丸…っ…。お前だけじゃない、俺だって弱いよ…!」

そんな弱音を聞きたいわけではないのだ。そもそも、俺とお前では弱さのベクトルが違う。俺の弱さは自分勝手で惨めな思考の結末でしかない。
だけど、お前の弱さはみんなを―そう、俺ではなくみんなを守るための力だ。

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ベクトル方向不明。

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