かわいそうだな道徳的にどうかと思われるお話です。精神的にも年齢的にも責任を持てる方のみ閲覧ください。

相変わらずの鬱で暗いお話です。風丸さんがぐだぐだしてます。円風?円←風?


----------------

久遠(娘の方だ)が倒れた。病院に緊急搬送され、監督もそれに付き添ったが俺達はそれでも今日の分の練習のノルマをこなす。
それを終えた後の円堂は、珍しく酷く狼狽しているように見えた。優しい円堂のことだ、本当は今すぐにでも久遠の所へ駆けつけて見舞ってやりたいのをキャプテン、という自制心で押さえつけている。

そんな円堂の弱さにつけこむ俺は卑怯だ。本当に嫌な人間だと思う。でも、そうでもしないと不安で不安でたまらないんだ。

なあ、円堂。


コンコン、と円堂の部屋の扉をノックする。返事は無い、けれど構わずにノブを回し室内に侵入した。

思った通り、ベッドに腰掛け不安げな表情で悶々としている円堂がそこに居た。円堂は気配で俺が入ってきたのを感じ取ったのか顔を上げ、気丈そうな表情を作り上げる。俺にまでそんな風に振る舞わなくてもいいのに。たまには頼ってくれたっていいのに。

「心配か?久遠のこと」「……そりゃあ…、心配だ。当たり前だろ」

「そっか、当たり前、か」

だったらもし俺が同じ状況になっても同じように誰の目から見ても明らかなくらい狼狽してくれるだろうか。頭の中を全部俺のことで埋め尽くしてくれるだろうか。

「あのさ、円堂」

「…?何」

顔だけは隣に腰掛けた俺の方に向く。それでも考えているのはまったく別のことなのだろう。…目の前に居るのは俺なのに。


「俺も、小さい頃の記憶無い、って言ったらどうする」

「……え、嘘だろ?だって幼稚園の頃のこととか覚えてるじゃん」

「うん。うそ。…でも、家の親は俺は昔の記憶が無いと思ってる」

「は…、どういう…?」


円堂の関心が俺に集まるのが分かった。なんだか気分がいい。あまり話すのは得意ではなかったが、今の俺はやけに饒舌だ。

「俺さ、12の時売られたんだ。1000万で。家、実は貧乏で、山ほど借金あったんだって。だからその対価として。あ、売られた、って言っても一日だけだったんだけど。親が泣きながら俺に頭下げるの。実の親がだよ。俺も家が厳しいのは分かってたから大人しく売られた。…って言うのもおかしいけどな。とにかく、俺は啜り泣く両親から見ず知らずのおじさんに引き渡された。売られた子供って何するか知ってるか?男だったら労働力とか。まあ、そんなんで1000万はおかしい、って俺も理解してたから何か別のことだろうな。って考えながらも何をしなきゃいけないかなんて見当もつかなかった。もし俺が女子だったら分かったのかもしれないけど。つまり、あれだよ。売春、ってやつ?まあ、ちょっと違うかもしれないけどやったことはだいたい同じだと思う。知らない大人たちに囲まれて、思い出したくもないようなことを沢山された。一日だったから正気保てたけど、二日とか三日とか続いてたら発狂してたかも。あ、そういやビデオも撮られてたな。裏ルート?みたいな所で売られるんだってさ。そんときはよく分かんなかったけど今思うとそれって歴とした犯罪だよなあ。で、その日の深夜に俺は家に帰された。誰も何も言わなかったけど、両親は俺が何をされたのか分かったんだと思う。何回もごめんなさい、って言われてさ。別に俺は構わないのに。……だから、記憶喪失の振りをしたんだ。見せかけだけでも普通の家族でいられるように。お陰で今はそこそこ安寧。借金もなくなったみたいだし。あ、でも借金できたらまた売られちゃうのかな。さすがにそれは勘弁」

俺が一息ついた所で、ちら、と円堂の方を見る。その目は驚愕とか不安とかがない交ぜになっていて、少なくとも今だけは円堂の頭の中が俺でいっぱいになっているのがわかった。

「風丸、あの…」

「ね、円堂。俺に同情してくれた?」


----------------

風丸さんの一人語りの長さに驚愕。

10:Nov:5th/top