狡猾で滑稽なあたしの話風半風→円 ちょっとどろどろしてて性格の悪い風丸さんがいます。
>>> 俺だって子供じゃないんだから。自分だけを見て、なんてわがままを言う気なんてない。だけど、心の中では凄く苛々してるんだってこと、円堂分かってるのかな……。まあ、分かってる訳ないよなあ。円堂だもんな。
「で、その後先輩に会ってさ!」 「嘘!あの先輩高校行けたのか」 「それは失礼だろー。とにかく、喜んでたぜ」 「ははっ。そりゃよかった。」 「近いうちに顔出してくれるって」 「本当か!やったー」
いらいら。いらいらいらいら。 片付け当番の円堂を待っているのだが、同じく片付け当番の半田との会話が一向に終わる気配がない。しかも、俺の知らない昔のサッカー部のはなし。 半田も空気読めよな。俺がずっと円堂を待ってるの気づいてないのかな。はーあ、……本気でいらいらする。円堂だって……いや、円堂に気遣いとか求めてないけどさ、仮にも人が待ってやってるんだからさ、少しは気にしろよな。
あ、円堂がこっち向いた。申し訳なさそうな顔をして、手で謝ってる。ばーか。そんなことするくらいなら早く終わらせろ。ったく……やっと会話終了か。10分は話してたんじゃないのか?お前らは女子高生かよ。
ボールを片付け終え、俺の方に駆けてきた。やっぱり申し訳なさそうな顔のままだったけど、終わったんならそれで構わない。
「じゃあな、半田」 「おー!円堂も風丸また明日なー」
半田の家は俺や円堂の家とは逆方向だから、すぐに円堂と二人きりになる。ただの幼馴染みでしかないけど、ふたりの帰り道だけはなんだか特別な感じがして、どきどきする。さっきまでのいらいらが全部どきどきに上書きされてる。女子高生かよ、……俺。
「待たせてごめんな、風丸!」 「お前はいつも遅いんだよ……。なんて、まあ、別に俺が好きで待ってるんだからいいさ」
いらいらしてたなんて悟らせないように、笑顔で話を返す。この帰り道だけは円堂の臨む風丸一郎太を忘れないように心がける。優しくて思慮深くて、ちっぽけなことでいらいらなんて絶対にしない、そんな俺でいられるように。
「それでさ、さっきまで半田と話してたんだけど。OBの先輩がさ……あ、風丸は知らないよな。俺達が一年の時の――」
え、……。また、俺の知らない円堂の、円堂たちの話?だめだ、またいらいらする。いらいらいらいらいらいらいら。だめだって、俺が昔のサッカー部を知らないのはあたりまえなんだからいらいらいら。
結局、自分を押さえ込むのに必死で、その後何を言ったかとか、全然覚えてなかった。まあ、いっか。
次の日は少し早く登校した。今の時期朝練は自主的だけれど、体を思いきり動かしたい気分だったから。でも、既に来ている人がいて少し驚いた。
「……半田。」 「風丸!いつもより早いんだな」 「あぁ、まあ。半田は?」 「俺はいつもこの時間には来てるよ。みんなより努力しなきゃ置いてかれちまうからな!」
そう笑う半田はグラウンドでドリブル練習をしているみたいだった。駆け抜ける風が心地よさそうで、俺も早く練習しようと部室へ向かおうとした。けれど、それを妨げるように後ろから声を投げ掛けられる。
「そうそう、円堂から聞いたか?こんどOBの先輩が来るんだってさ。風丸は知らなかったっけか、あの――」
半田の足から離れてボールがころころと転がり、半田が立ち止まる。こっちを見て、笑う。だから、俺はそんな先輩知らないし、俺の知らない円堂の話なんてしてほしくない。
はた、と向きを変えグラウンドまで降りていく。半田が不思議そうな顔をしているのが見えた。ああ、もういらいらいらいら。半田が悪くないことは十分分かっているんだけど、無性に苛つく。ごめん、半田。もしかして俺、お前のこと嫌いかも。
「か、ぜ……まる?」
気がつくともう半田は目の前に居た。何が何だか分からないというような顔だ。まあ、当たり前だよな。っていうか、
「半田、顔真っ赤」 「うううるせえな!ってか近いんだよ!」
いやいや、普通同性に顔近づけられてもここまでならないって。ふーん……つまり、は。……って、いやいや、そんなまさか。 更に顔を近づけると、手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。足下のボールがまた転がる……ころころ、……なんだ、つまり半田も俺と同じなのか。だったらとことん利用してやろう。恨むなら円堂を恨んでくれ。はは、どこでこんなにこじれたんだろうな。昼ドラみたい……いや、今時の女子高生ってこんな感じかも。 ごめんな、半田。……俺はしゃがんで半田の耳元に口を寄せた。
「ねえ、半田」
おれ、はんだのことすきなんだけど。
いらいらいら。ころ、ころころ。 ――――――――
風半も半風も好きです^▽^! そして全国の女子高生さんすいません。柚木は中学のときの方がどろどろしてたなあ。 風丸さんは病んでる。円堂病という名前の不治の病。
▽10:Sep:7th/top
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