夢の終わりを告げるための、円風+照美



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外周を走り終え、息を整えていると円堂の笑い声が聞こえた。軽く目線を動かし、その姿を探すとペアの基礎練をしているのが見えた。いつもは俺とやっているのに、今日は誰とやっているのかと思いよく見ると、円堂の近くで金の長い髪がなびいているのが分かった。アフロディ、だ。

アフロディは綺麗だ。同性の俺が見惚れてしまうほどなんだから、女の子の目から見たらどれほどなのだろう。神様というより、天使が実際にいたらこんな感じだと思う。妄信的な所もあるが、性格だって良い。だれにだって平等に接するし、はきはきとした物言いは皆をまとめる力をもっている。もちろんサッカーの上手さだって俺の比ではない。それこそ、神と名乗ってもそれが揶揄の対象にならないくらいに。
そのアフロディは円堂をひどく気に入っているようだった。よく談笑しているのを見るし、アフロディが楽しそうに円堂について話すのはもはや日常茶飯事だ。もしかしたら俺なんかよりよっぽど円堂の事を理解しているかもしれない。まあ、それは豪炎寺や鬼道もなんだが。とにかく、誰に対してだって俺は円堂の隣を明け渡したくはない。醜い自己中心的な考えだと分かっていても嫌なものは嫌なのだ。

「どうしたの、風丸くん」
「あ、アフロディ…」
金の髪が視界にちらつき、いつの間にかアフロディが近くに来ていた事に気づく。どうやら俺は思案中しばらくの間ボーッと突っ立っていたらしい。まぬけな事をしてしまった。
「体調とか悪いの?大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。……円堂と基礎練してたんじゃなかったのか?」
「円堂くんなら立向居くんに呼ばれて、」
ほら、とアフロディが指差した先にはゴールで立向居に何か指導をしている円堂が目に入る。まったく、あわただしいやつだ。
「だからさ、基礎練の続き風丸くんとやろうと思って。基礎練まだだよね?」
頷く俺にアフロディは笑みを浮かべる。邪気なんて全く感じられない、本当に純な笑顔。そういう笑い方が出来るのは少し羨ましい。

「アフロディ、は、円堂のことどう思う?」
軽く柔軟をしながらずっと気になっていたことを尋ねる。正直、アフロディが円堂のことを好きだと言うなら勝てる気がしない。それどころか俺自身でさえ自分よりもアフロディの方が円堂の隣にふさわしいのではないかと思ってしまっている。
それでもやはり、円堂の隣を譲るきはないけれど。

「円堂くんは、僕の神様だよ」
「……か、み?」
予想外の答えに驚きを隠せない。というか、神様というなら円堂よりもお前――
「円堂くんがいなかったら、今の僕はここに居ないから」
そう言ったアフロディの笑顔は、俺にとっては正に神様に見えた。

「風丸ー、アフロディーー!!」
ゴールの方で円堂が大きくこちらへ手招きをする。行こう、とアフロディは俺の左手を掴み走り出した。

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円風…?いやむしろ円←風→照、みたいな感じですね。
途中から話の変わる漫画も書いてたりします。

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