開ける扉を間違えた吹雪×緑川。緑川視点ver。
吹雪が最低で真っ黒です。
FFIアジア予選中。合宿はしておらず、吹雪はアパートを短期で借りてる設定。
ついでに緑川はヒロトと二人でホテル暮らしです←本編に関係ない。




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「あれ、吹雪は?」

練習を始める前、キャプテンのその一言に皆は辺りを見渡す。俺もきょろきょろと吹雪の姿を探しては見るものの、やはり居ないようだ。
「まいったなー……あいつ、いつも早く来てるのに」
「監督にも連絡行ってないらしいぞ」
「昨日までは普通だったんだが」
みんなががやがやと話し出す。吹雪が無断欠席なんて、普段の態度から考えたらありえない。まあ、不動あたりならやりそうだけど――、とにかく、何かあったであろうことは間違いないみたいだ。
「うーん……確か吹雪は近くのアパートだったよな?だったら、俺がひとっ走り…」「待って!……俺が行くよ!キャプテン達は練習始めてて」
キャプテンが何か言う前に、俺はグランドに背を向けて走り出していた。


正直、罪悪感が無かったわけではない。雷門中を、その他にもたくさん学校を破壊してきたことは立派な犯罪だし、許されないことだ、って分かっている。子供だから、こちらも被害者だから、なんて言い訳でなんて済まされないし、済ましたくなかった。罪の償い方を真剣に考えた。
そんな時にイナズマジャパンに選ばれて、嬉しかったと共に困惑した。サッカーを破壊の道具にした俺に国の代表となる資格なんて、あるはずがないって思った。だけど唯一同じ境遇であるヒロトが「イナズマジャパン」の力になることが償いだ、そう言ったから今の俺がいる。
笑顔でいることに慣れてきた今、積極的にやれることをやりたい、誰かが困っていたら助けてあげたい。ただそういう単純な動機だったと思う。

ダッシュで約三分。吹雪の一時的に住むアパートに着いた。俺達の泊まっているホテルのすぐ近くだったからよく知っている。中学生が一人で過ごすには少し広いそうだが、日本代表ということを考えたら妥当だろう。
俺は門の横の階段を駆け上がり、吹雪の部屋を探すが、その時になってやっと二階という事しかしらないと気づいた。部屋番号を聞かなかったことを少し後悔。それでも表札を確認していくと、四つめのドアに吹雪、と書かれているのが分かった。
新聞はまだ郵便受けに入ったまま。ただの寝坊か、それとも病気で動けないとか。吹雪に限ってサボりとかはないと思うけど。

インターホンを押すと機械的な音が響く。しばらく待ってみるが返答はない。二度、三度と続けて押すと、どすん、という音が聞こえた。どうやら中に居ることは居るらしい。四度目、足音がだんだん近づいて来るのが分かり、押すのをやめた。
鍵が開けられる音がした。ガチャリ、開いたドアの向こうに居た吹雪はまだ寝たときの格好のようで、髪もボサボサ。ついでに機嫌がすこぶる悪そうだった。いつもの吹雪とは大違いだ。
「や、やあ……、えっと、練習……」
とりあえず笑顔を取り繕うが、吹雪はこっちをじっと見るばかりで何も言わない。視線に耐えかねて目を反らした頃に吹雪がやっと口を開く。
「ああ、ごめんね。緑川。ちょっと頭が痛くてさ。わざわざ迎えに来てくれたんだよね」
「い、いや、別に…」
視線を吹雪に戻すと、今度は満面の笑みを浮かべていた。正直、怖い。何を考えているのかさっぱりわからない。
「着替えるから待っててくれる?」
言いながら吹雪は小さく頷いた俺を室内に導く。

ガチャリ、鍵の閉まる音がした。
そうして俺は自分の間違いに気づいた。

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吹雪編に続きます。緑川の一人称難しいですね…。
意図的に改行少なめにしてますが、読みづらかったら改善します!

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