あの太陽は優しく眩しかった半田と一之瀬。
一半?
未来捏造注意。


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サイレントにしてあった携帯が点滅する。メールだ、と目では認識するけれどまさか仕事中に携帯を弄るわけにもいかず、そのまま書類に目を通す作業を続ける。
単調な毎日だが特に不満もない。そこそこに生きてきて、これからもそこそこな人生を送るのだろう。それが幸せってやつじゃないのか?


携帯に表示された名前に目を見張る。懐かしい名前。最後に連絡を取ったのはいつだっただろうか。たしか、成人式の後にやった中学の同窓会。久しぶりに会ったサッカー部の面々はプロになっていたり大学生活を送っていたり。みんなバラバラになっていたけれど、昔みたいに笑いあえた。
あいつはアメリカから駆けつけて、みんな袴なのに一人だけラフな格好をして目立っていた。昔から明るくて社交的で、しかもかっこいい。さらに今やプロサッカープレイヤーとなったあいつは沢山の人に囲まれて笑顔を浮かべていた。悔しいくらいにかっこよくて、俺は話したいのを我慢して遠巻きにあいつを眺めているだけだった。
ああ、俺、昔からなんもかわってないな、ってなんだか悲しくなった。

円堂からの提案で、サッカー部の面々だけで二次会を行うことになった。それでも俺はあいつとまともに話せなかった。どころか、互いに避けていたように思う。近況を報告し合うことになった時、自分にはとりたてて報告する事がないのを少し悔しく感じた。風丸は大学で走ってる。長かった髪を切ったのは少し勿体ない。円堂はプロサッカー選手。毎日のようにテレビで見てるからあまり懐かしいとは思わなかった。豪炎寺は医大に通っている。サッカーは?と、問うと、今は中学に教えに言っているのだと答えた。鬼道は大学に行き経済学を学んでいるそうだ。将来は会社にサッカーチームを作るらしい。影野はまさかの留学中。会えなかったのは残念だが、かなり明るくなったようで笑顔を浮かべた写真と、近況が書かれた手紙が届いた。松野はベンチャー企業を起こしたらしい。そういえば先日新聞に載っていたな、と鬼道が言ったのであとで確認しようと考えた。土門はアメリカでサッカー解説者をしているらしい。仕事柄あいつともよく会うそうだ。

あいつは、……あいつの近況はよく知っていた。日本でも有名なサッカープレイヤー。テレビなどであいつのニュースをやっているとついつい見てしまう自分が嫌だった。
そんな遠き存在となったあいつが今は手の届く位置にいる。それなのに手を伸ばさない自分にもあいつにも苛立った。本当は今すぐいろいろ話したい、もっと、もっと……。そう考えた自分にさらに苛立った。


「半田、」

あいつが声を掛けてきたのは二次会が終わった後だった。円堂たちは三次会に突入するらしく、あいつもそっちにいくものだと思ったのに。

「何?」

飲み屋を出て、歩きながらあいつに返事をする。気だるげな言い方を装いつつも、実際心臓がばくばくいってた。なんて、浅ましい。

「俺さ、うっかりホテル取り忘れちゃって」
「へぇ、それは災難だな」

あいつは俺の数歩後ろを歩いているから、どんな顔でいるのか分からない。ただ、俺の顔を見られないのは有りがたかった。自分では分からないが、いまの俺は嬉しさと緊張がない交ぜになったような、そんな顔をしているのだと思う。

「半田の家近いんだろ?……よかったら泊めてくんない?」

時刻は深夜12:30。今からホテルを探すなんて到底無理な時間だけど、実際問題漫画喫茶でもカプセルホテルでも、泊まろうと思えば何処でもある。さすが大都会東京。それに確か風丸や松野もこの近くに住んでいるらしいし。
なのに俺に頼んできたってことは……、いやいや、調子に乗ってはいけない。中学の時もこんなノリで、大抵は俺の期待しすぎで終わっていた。ここは慎重にいかなくては。

「でもアパートだから、狭いし汚いぜ?」

「どんなとこでも泊まれるならいいって!」

「あの角を曲がったらカプセルホテルあるけど」

「えっと、今金欠で……、じゃない、ええと」

しめた。あいつは馬鹿じゃないけど時折小さなミスをする。それは極度に焦っているときに出るあいつの癖だと俺はよく知っていた。だから、

「まさか。お前の契約金、俺だって知ってるぜ?それで金欠になるなんて、自家用機でも買ったのか?」

「ああ、もう……、だからさあ…………」

「何?」

後ろであいつが息を整えるのが分かった。何故だか俺まで無駄に緊張する。

「久しぶりに、半田と色々話したいことがあるんだ」

あいつの足音が止まる。思わず立ち止まり振り向くと、必要以上に真剣な顔でこっちを見ていた。相変わらず、かっこいい。ムカつくくらいにかっこよくて、こっちがドキドキしてくる。

「馬鹿じゃないの」

うつむき加減に言う俺はどれだけ滑稽なんだろう。というか、馬鹿は俺だ。久しぶりなのに、本当に会いたかったのに、意地を張るなんて損な性格。

「いいよ、泊まってけよ」

なおざりに答えてから、あいつの視線に耐えきれずに前へと向き直す。一歩、二歩と歩く内に気づくとあいつは俺の横に並んでいて。昔より広がった身長差が少し悔しかった。

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長いので切ります!続きます!

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