ペラペラと手帳のページを捲る。風丸が誕生日にくれたそれはシンプルで実用的で、なんの変鉄もなかった。だが、予定を書き留めるような几帳面さを円堂はあいにく持ち合わせていなかった。
もてあまし、たまに思い出したように捲ってみる。そのうちに、ひとつの事にきがついた。とある1日、その1日だけに印がついているのだ。気がついてしまうと気になって仕方がない。なんの日付なのか、円堂は心当たりを考えてみるがそのどれにも当てはまらない。一月もするとすっかり記憶の端にも留めていなかった。

だが不思議なこと、とは意外と有るものなのだ。何の因果か円堂は母に叱られながら部屋の大掃除をしているうちに手帳を見つけた。そして、その日は印がつけられていた、まさにその日であった。
そうして気になって気になって、円堂は大掃除を中断して風丸の家へと駆けた。


「…円堂?」

突然現れた友人に風丸は不思議そうに声をかけながらも家に招き入れる。二人でリビングの椅子に腰かけると、円堂はおずおずと口を開いた。

「今日って、何かの記念日だっけ?」

円堂は一息に言い切る。何故だが聞いてはいけないような気がしたが、聞かなくてはいけないという思いがそれに勝った。
風丸は不思議そうな顔をして、首をかしげ、悲しげに苦笑した。

「忘れたのか?」

「…風丸、の、誕生日?」

違う、と円堂はわかっていた。さすがに風丸の誕生日を忘れてはいない。

「違うよ、逆」

逆、つまり、

「俺の命日じゃないか」

酷いなあ、と泣きそうなくらい切なく笑う風丸は俺の知っている風丸じゃなかった。偽物だ。そうだ。なあ、風丸。

円堂はまた忘れようとした。それを何度も何度も風丸は阻止する。今度も結局は失敗したけれども忘れさせるわけにはいかないのだ。

「これが本物の俺だよ。現実だ」




-------------------------------
注:死ねたじゃないです


11:Nov:13th/top