D.D.D.の続きです。三時間後くらい。友人は色々あってフェードアウト。




海が好きなんだ、と真っ直ぐに言う綱海さんはとても眩しかった。自分のうだうだしているちっぽけな悩みごとなんてどうでもよくなるほど海は大きいのだ。綱海さんと居ると、心が晴れ渡るようで気分が良かった。

「綱海さんは、素敵ですね」

だからだろうか、普段なら言いあぐねるような言葉も口からぽんぽんと出てくる。一番驚いたのは自分だったが、綱海さんは満足げにしていた。

「おぅ、サンキュ!…はーっ、なんか照れるな」

素敵とか面と向かって言われたのは初めてだ、その綱海さんの言葉で自分の格好を思い出した。普通に男同士で会話しているつもりだったが綱海さんは未だに俺を女だと勘違いしたままだったのだ。
本当の事を言うべきか迷う。そんな人じゃないとは分かっているが、もし気持ち悪がられたりしたら。自分で好きでこんな格好なわけではないが、初めに言っておけばこんなことにはならなかったのだ。友人達と自分の不甲斐なさを恨む。けれどどうしようもなかった。

「立向居はさ、海の向こうに何があると思う?」

突然振り向く綱海さんに俺は慌てて表情を取り繕い、答えを考える。

「海の向こう……、外国、ですかね」

そう答えると綱海さんはうんうんと難しい顔をしながら頷く。

「そう、外国だよな。あとは、地平線とか宇宙とか、そういう感じだよなあ」

じっと海を見つめながら綱海さんは夕陽を眩しそうにして、手を額にあてた。その目はずっとずっと遠くを見つめているようだった。

「でも、俺は海の向こうに何があるかなんて想像できないんだ。ずーっと、どこまでも海が続いてるような気がしちまう。」

そんなこと無いって理解してはいるつもりなんだけどな。、と小さく呟く綱海さんは少し悲しそうだった。その様子を見て、思わず俺は叫ぶように強く言葉を紡ぐ。

「綱海さんが言うなら、海はずーっと続いてるんですよ!」

「…え、いや、でも」

「証拠?そんなのありません。でも、綱海さんが言うなら間違いないです」

「お、おい、あのな」

「自分を信じてください!それが無理なら俺を信じてください!」

一息で言いきってから、なんてことをしてしまったのだろうか、と後悔する。これじゃあ意味不明で訳のわからない奴じゃないか。恥ずかしさに顔を膝に埋めると、綱海さんが俺の背中を強く叩いた。

「そうだな!俺は立向居を信じるぜ!」

「…はあ?」

勢いよく立ち上がった綱海さんはガッツポーズをしていた。どうやら俺の言葉に感化されたらしい。純粋というか、単純というか。とにかく正直で真っ直ぐな人だ。

「待ってください、そんな、簡単に…」

「何だよ、立向居が言い出したんだろ?やっぱお前男らしいな!さすが、俺が見込んだだけあるな」

「いや、だから………え、…男、らしい?」

綱海さんの発言に引っ掛かる。男らしい、という言葉は普通女の子に使うものだっただろうか。いや、使う場合だってある。だろう。しかし、この場合はつまり、

「俺、男だって…」

「ん?どうした、立向居は男だろ」

つまり、最初から綱海さんは俺が男だと気づいていたのだ。

「…この格好……あの、」

「似合ってるぜ!」

「…そうじゃなくて……、やっぱいいです」


友人に連絡し、着替えてまた海に向かうと綱海さんは変わらず海を見つめていた。そういえば、今日はサーフィンしないんですか?、と問うと、波が低くて無理なのだと言う。少し残念な気がした。

綱海条介は海を愛し、海に愛された男なのだ。


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