基本的に俺の倫理観はずれている、そう気づいたのが10の時。これはヤバい、と感じたのが11の時。12の時なんとかしようと努力し、13の今諦めの境地に達している。
そもそも、今までの人生普通じゃなかったのだから倫理観ごときずれていて当然なのだ。そうヒロトに話すと、彼は困ったように笑って見せた。


「だからさ、無理だって分かってるのに頑張るなんておかしいだろ」

俺の言葉にヒロトは何も言わず、眉尻を下げながらただ聞き続ける。ヒロトのそんな顔が俺は嫌いだった。なんだかイライラする。
しかし、別段彼に非がないことは理解しているから俺はさらに淡々と言う。

「夢だって所詮は現実の延長線上にあるものだから」

そもそもこんな馬鹿みたいな倫理観を説明しなくてはいけなくなったのは瞳子さんのせいだ。七夕の短冊に子供らしくないことを書いたから、などと言ってわざわざ呼び出すなんて。ヒロトが途中で割り込んでくれなければぐちぐちした話はおそらくもう一時間は続いていただろう。その時はヒロトに感謝した。
けれど、ヒロトまで「なんでこんなこと書いたの?」、なんて大人みたいな事を聞くのだ。純粋な興味ならまだしも、ヒロトは人の考えを穿つ癖があるのでたちが悪い。しかたなしに説明を始めるとこれだ。意味がわからない。

「俺は、現実だって捨てたもんじゃないと思うけどな」

ヒロトがそう言うのに反論すらする気がしない。仕方ないので黙っていると、それまで俺の前で直立不動だったヒロトが俺の隣の椅子に腰かけてきた。
そしてそのまま右手で俺の頭を軽くたたく。本人は撫でているつもりなのかもしれないが、正直少し痛い。それとも、わざと痛くしているのだろうか。

「緑川は諦めが良すぎるんだ」

「だって、諦めなくたってどうせなにも出来ないじゃないか」

相変わらずぽんぽんと頭を叩き続けるヒロトにそう言ってやると、驚いたような顔をされた。そんな言葉は予想だにしていなかった、とでも思っているかのような大袈裟な表情だ。バカなのか、それともひどい天然なのか。
それでも特に反応を示さずにいると、ヒロトはやっと叩くのをやめて、それから少し怒ったように言った。

「できるよ。諦めない、って事が出来るじゃないか」

「……屁理屈」

そうだ、屁理屈だ。
だけど、俺の心の奥底は歓喜に震えていた。俺が欲しかったのはそういう言葉だったんだ。大人に求めていたその意見は同い年の子供からあっさり提示されてしまった。
つまり、所詮はすべて子供らしい反抗心なのだ。
それに気づいて思わずにやにやしていると、ヒロトが不審そうな目を向けてくる。仕方がないので、にこっ、と笑ってやる。するとヒロトは一瞬躊躇ってから俺に笑い返した。


「君子の交わりは淡きこと水の如し、ってね!」

「…え?どういう意味?」




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