男の子も女の子もサッカーが好きな気持ちはかわらない筈なのに。「女の子なんだから」、という言葉が何より嫌いだった。

通っていた地域のサッカークラブは小三のとき男の子と女の子でチームが別れて、それ以来行っていない。学校のクラブ活動なんて端から女の子はサッカーをやってはいけない、みたいな雰囲気を醸し出していて行けっこない。
だから、私はお父さんに初めてのわがままを言った。そうして作ってもらったのがSPフィクサーズ。年上ばかりだったけどみんなやさしくて、私は私のやりたいサッカーを思い切りやることができた。
ただ、やっぱりそれでも同じくらいの年で一緒にサッカーする友達は欲しかった。至極真っ当なお願いだと思う。だって、そもそもその時私には友達らしい友達さえ居なかったのだから。
そんな私にとって、テレビで見たフットボールフロンティアはまさに、夢舞台だった。雷門中学の名は私の中で馬鹿みたいに神格化した。どうせあの中には入れない、そういう気持ちが相反するのに、雷門中学になら私の望むサッカーがあるのだと信じてやまなかった。



その時、円堂守は私の前に現れた。
夢みたいだ、そう思う歓喜を胸の中に押し込めた。否定されたくなかった、女の子がサッカー、なんて、思われたくなかった。


「搭子さん、ご飯できてるけど…」
「秋…」
「早く来ないと冷めちゃうよ」
「ああ、うん。ごめんごめん」

ひとり佇んでいた私を秋が呼びに来る。いつの間にか空は暗くなっていて、確かにお腹も空いたように感じる。

秋はかわいい女の子、だ。私とは根本的に違うみたい。昔はサッカーをしていたと聞いて、どうしてやめたのかと尋ねたことがある。返事は、「今は円堂くんたちがサッカーしてるのを見るのが楽しいから」。やっぱり私にはその気持ちは理解できなかった。女の子の考えることはよくわからない。

秋について宿に戻ると、もうみんな席に着いていた。どうやら私を待っていたらしい。選手でもない、ただ遊びに来ただけの私に気を使うことなんてないのに。そう思いながら席に座る。

偽宇宙人と戦っていた時は楽しかった。男の子と同じように一緒にプレー出来たから。逆を言うと、今は最悪だ。
実力なんかじゃなくただ単に性別の問題だけで私はFFIに出られない。理不尽だ。リカにそう言うと、笑ってたしなめられた。「悔しいけど、しゃーないやん。うちらはうちらで、いつか女子FFIが開かれるの楽しみにしとこーや」それでも私にはその気持ちは理解できなかった。

「やっぱり、私って女の子向いてないなあ」

なあ、円堂。

11:Jul:10th/top