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庭から部屋に戻ると、なんだか子供たちがおろおろしていた。

「いらっしゃった!」
「おかえりなさい、天女様。善法寺先輩とご一緒だったのですね」

この子たちは知っている。最初に目を覚ました時部屋にいたし、その後にも私の身の回りの世話をしてくれた。彼らは私を見るとホッとした表情をしたので、きっと私が何も言わず部屋から出たから、驚いたんだと思った。

「心配かけちゃったみたいだね」
「どちらへ行かれていたのですか?」
「ちょっと庭を歩いてきたんだ」

さっき善法寺伊作と名乗った人と、子供たちのなかでは年上の方に見えるふわふわの髪の子が話しているのを聞いていると、眼鏡をかけた青い着物の子が、私の所に寄ってきた。

「春先とはいえ、外はまだ寒かったでしょう」
「…そうでもない。制服って結構重ね着してるから」
「せいふく、ですか」
「珍しい?」
「はい。初めて見ました」

私を気遣ってくれたその子は、眼鏡越しでも分かるくらい、好奇心で瞳をきらきらさせた。着物の着方が分からなかったから、洗濯されて枕元に置いてあった着慣れた制服を着ただけなんだけど、やっぱりここでは目立つみたい。もう一人の青い着物の男の子もやって来て、ずいぶん丈が短い着物ですよね、すごいスリル〜と言ったので、自然と私の足に注目が集まった。

「…乱太郎、伏木像。あまり女性の足をじろじろ見るものではないよ」
「あっ、すみません!」
「失礼しました」
「申し訳ありません。二人とも、悪気はないのです」

こほんと咳払いして、善法寺伊作が幼い二人をたしなめる。相手は子供だし、足なんて普段から出している訳だし、ちょっとくらい見られてもあたしは別に構わない。だけど注意された子たちはすぐに謝って目をそらし、上級生は彼らをかばって私に頭を下げたので、そういう文化なんだろうなあ、と思った。昔の日本っぽいもんね。そうなると、軽率にスカートをはいたこちらが申し訳なくなる。

「いや、あたしは大丈夫だから…」

子供たちは悪くない。そう言おうと思って、善法寺伊作を見ると、その顔は真っ赤に染まっていた。あたしがそれに気がついたと分かった彼は、目をそらしながらしどろもどろに言い訳をする。

「すみません。今まで平気だったのですが、改めて言われると意識してしまって…あのですね、」
「…子供はセーフだけど、」

善法寺伊作のあの優しげな顔が赤くなるのを見たら、急に足を出していることが恥ずかしくなってきた。なんでだ、さっきまで全然平気だったのに!

「あんたは確実にアウトよ!着替えるから、出て行って!!」

私が大きな声を出すと、善法寺伊作と子供たちは慌てて部屋から退散した。彼らがいなくなった後、着物を着ようと思ったものの、分からなさ過ぎて挫折し、ふて寝するかと布団に入ったあたしだったが、

「すみません」

と襖の向こうで声がしたので思い留まる。お客さんみたいだ。今人と話す気分じゃないんだけど…。

「善法寺さんから、着付けを手伝って欲しいと頼まれました真冬と申します。中に入っても、よろしいですか」

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