![]() 『大丈夫ですか?』 何処か遠くから、聞き覚えが有るようで無いような声が聴こえる……。 (………誰、だ?) 凜が薄く目を開けると、どこか見覚えのある女性が心配そうに覗き込んでいた。 綺麗な長い金髪をポニーテールにした、美しく若い女性だ。 胸に付けているネームプレートの様な物は英語か何かで書かれていて、寝起きで未だ頭がハッキリとしていない凜には、元々外国語は苦手である事も手伝って、何と書かれているのかよく分からなかった。 『良かった…!気が付いたのね…!』 彼女が何と言っているのか、分からない。 ……英語……で話しかけてきているのだろうか? 「済まないが、私は英語はよく分からないんだ。」 『?……お水が欲しいのかしら? 待っててね、すぐに持ってくるわ。』 そう言って彼女は去って行った。 ……日本語が分かる人でも呼びに行ったのだろうか……。 ………それよりも………ここは何処なのだろう……? 少なくとも……来たこと無い場所だ。 ……それなのに……何処か見覚えがあるのは何故だろうか……。 ……ついさっきまで自分の家にいた筈なのに…。 何故ここにいるのだろう……。 そう思いながら未だはっきりしない頭で辺りを見回して、驚愕とそれによる衝撃で完全に目を醒まし、凍り付く。 《Jack's BAR》 カウンター奥の壁には見間違いようのないほどはっきりとそう書かれていた。 ![]() |