※津サイ+静臨?
唯、臨也が精神壊れてます
痛い程にシリアス路線です







つがる、

つがる、

つがる、


君の歌が大好き。頭に響く、テノールの声。日本独特の文化が伝わる歌。他の人が歌うんじゃダメなんだ、君が歌うから俺は好き。

好き、好き、好き

つがるの歌も、つがる自身も大好き

なのに何故だろう、君の歌が大好きなのに、君の歌が鼓膜を響く度に、俺の何処かが欠損していく。ぽろぽろと溢れ出して怖くて怖くて仕方がない。




自分が壊れていきそうで、


だけど、俺は君が好きだから、


どんなに壊れたとしても、


君が歌うことを俺は望むよ


―――――どうか、最後迄聴かせて













「……僕じゃダメだ、治せないよ」

真っ白い病室。真っ白いベッド。そこに横たわるのは背景と溶け込む様な真っ白いコートを着込む艶やかな黒髪の青年。だけども閉じた瞳はまるで死人のように開く事はせず、否彼は人間とは似て非なる存在な為、死人と例していいかは不適切であるかも知れない。だけど触れた時に伝わる人肌の温もりが、彼が人間であると思わせてしまう。
岸谷新羅は、会う度に感じていたことを又頭に浮かばせながら、現在状態では残酷とも取れる宣告を目前で青ざめている津軽へと告げた。


「嘘だろ、」

「嘘じゃない。外傷は全く見当たらないけど内部の損傷が酷いんだ。熱で溶けた…いや理論上は有り得ないんだけど、説明するならそれが適切だと思う。津軽、君が歌う歌は確か――」

「…俺は演歌しか歌わねぇ」

「……言いにくいんだけど、多分それが原因かな。サイケには容量がないんだよ、いや、普通の洋楽とかは平気なんだ。だけど何故か演歌だけ、サイケの…つまりは人間にあたる脳で変換出来ないんだ」


新羅は人差し指を額に宛てながら津軽にも分かる様に言葉を選んで紡いで行く。
実際のところ、新羅自身も愕然としていた。闇医者である彼は通常人間しか診ないのだが、津軽とサイケが"出来て"から、その辺りの知識も手に入れた。その為時折メンテナンスという理由で彼らは度々新羅の元へと来るのだが、今朝は違った。
青ざめた津軽がサイケを抱えて早朝駆け込んできたのだ。
理由を聞く暇等なく、「急に動かなくなったんだ、」と現状にパニックを起こす津軽をなんとか宥めてサイケを見る。

外傷なんて見当たらなかったが、内部を調べた瞬間、まるで悪性の腫瘍を見つけた時の様に新羅は言葉を失った。動力を司る部位のみが熱で溶けたかの様に欠損していたのだ。

人間の病状で例えるならば、医者はきっとこう言うのだろう「もう、助からない」と――


「………っ、」

「脳で変換出来なくて処理しきれなかった莫大な情報が熱暴走を起こしたんだと思う。君にとっては残酷な事実だけど、これが原因だ」

「…なん、でだよ…、サイケはなにも言わなかった、」

「サイケは君の歌が好きだったからね…気づいてたとしても、聴けなくなるのが嫌だったんだと思う」

「……っ、なんで…処理出来ないん、だよ」

「それに関しては分からない。けど、多分。そうプログラムしたのは…"臨也"だ」


気まずげに、でも正確に、新羅はサイケを作った親元にあたる人物、友人の名前を口にした。正直躊躇いがあった為に言うのか迷った、だけどこんな状況でうやむやにしては津軽に対し失礼だと思ったから。
津軽は臨也の名前を聞いたと同時に、目を見開く。サイケと同じ顔で同じ声で、親元にもあたる存在。


「そして、彼を治せるのもきっと――臨也だけだよ」

「……っ!」

それを聞いた津軽は感情のまま立ち上がり部屋を後にしようとドアへ向かう。新羅は少し慌てた様に言った言葉を少し後悔して津軽を呼び止めた。


「…津軽待って!臨也は今…っ!」

「分かってる!!だけど俺は、このままサイケがいなくなるのが…――やなんだよ。臨也の状態は知ってる、それでも、可能性があるなら」


拳を握り締め、苦悩を表情へと顕す様は矢張り人間とは大差等存在せず、新羅は益々心を痛める。彼らが感情などなく、ただ歌うだけの存在ならば良かったのに。――無情だけどそう思った。新羅にさえ臨也の考えは分からない、けど、今の臨也に問い質すことは無理だと思った。

――だって臨也は、


「分かった、けど気をつけて欲しい。医者として、臨也も一応は俺の患者だ。だからあまり刺激は」

「……ああ、」


真剣な表情に、津軽は徐に頷く。きっと彼は優しいから臨也を責めることはしないだろう、だけど沸き上がる不安は胸を締め付けた。
パタンと、ドアが閉まる。

残された新羅は、ベッドに横たわるサイケを見て眉根を下げた。
何故こうなったのか、何故こう苦しむのか、分からない。きっとこの場に新羅の想い人がいたなら新羅よりも心を痛めていただろう。

「…なんでこうなるんだろうね。臨也は、どうして、…分からないよ、――セルティ」


呟いた言葉は無為に空へと消えた。どんなに考えても臨也には伝わらないだろう。例え、それを、静雄が言ったとしても伝わらないのだろうけど。










つがる、
つがる、

なんでかな、なんにも見えない

君の声が聞こえない、

ああ、俺は壊れちゃったんだ。

分かってるよ、

大丈夫、

だって、

これは臨也が望んだことだから

怖かったけど平気

だけど、

やっぱり、

君の歌を最後迄聴きたかったよ






contrast dream






「あ、アハ、ははハは!」

静かな室内に不意に響き渡る笑い声。唐突に響き渡った何処か狂った声に静雄はびくりと肩を揺らして、声の主を見遣った。声の主、臨也は散々泣いた為に充血した赤黒い瞳を歪ませて、喉が痛いだろうに止める事はせずに笑っている。
静雄は訪れる眠気を振り払い、臨也に近付いてそのか細い身体を抱きしめた。普段から細い細いと感じてた弱々しい身体は数日ちゃんと食事を摂取していなかった為に更に脆く感じる。何度も食べさせた、だけどその度に臨也は拒絶して、今は新羅から貰った薬でなんとか凌いでいる。

抱きしめれば答えるように臨也は静雄の胸元に顔を埋めるものの、臨也は変わらず肩を震わせて笑う。


「どうした?なんか嬉しいことがあったのか…?」


優しい静雄の問い掛けに臨也は肩を少しだけ跳ねさせ、笑みを浮かべた顔を上げて静雄を見た。


「やっと!やっと、壊れたんだよ…っ俺には分かる、壊れた音。わざわざプログラムを弄ったんだから、きっと!」

「…臨也?」

「ざまあみろ!!…あいつら、だけ幸せ、は…やなんだ…っ」


静雄の服を掴んで至極嬉しそうに臨也は枯れた声で高らかに言葉を紡ぐ。理解をしてない静雄を置いてくつくつと笑う。だけど言葉を零す事に臨也は顔を歪めた。嬉しい筈なのに、歪めた瞳には涙が滲む。それを見た静雄は理解が出来なかったけど、その身体を強く抱きしめた。


「……ずるい、ずるいよ、あいつらは」

「………」

「あいつらだけ幸せなんて、俺は…シズちゃんから愛して、貰えないのに…!」

「…っ!俺は…!」

「嘘つかないでよ!!」


先程泣き止んだのに臨也は再び瞳を濡らし枯れる事のない涙を頬に伝わせてかぶりを振る。こうなっては静雄がなんと言おうとも臨也は聞き入れない。だから抱きしめるしかなかった。胸がキシリと痛むのを感じながら。


「分かってる、分かってるもん。シズちゃんが俺の傍にいてくれるのは優しいからでしょ?ホントはやだよね、大嫌いな俺の近くにいるの、ごめん、ごめんね」

「………も、やめろ…」


泣きながら微笑む臨也は静雄の胸を深く刔った。擦れ違う心は多分これからも合わさることはないのか、もう何度も繰り返した会話。その度に少しずつ壊れて行く。けど直す術なんてなかった。


「…でも、なんでかなぁ…」


ぐすっと肩をひくつかせながら臨也は目を閉じた。伝わる体温。伝わる鼓動。何故だかどうしようもなく悲しくなる。


「やっと…壊れた、のに…なんでか凄く、悲しいんだよね…」


ぽつりと呟くと、また、新しい涙が頬を伝った。



きっと、


もうすぐ来るだろう、


さあ、

早く、


君達を不幸にした、


俺を、殺して







――――――――――――――

補足説明。
(後編のネタバレを無駄に多く含んでるので結構注意です←)


津軽とサイケは付き合ってます。でもサイケは臨也が大切です。静雄と臨也は両想い通しの片思いです。静雄は何度も臨也を好きだと言ってますが臨也はそれを嘘だと思ってます。つまるとこ臨也は病んでます。両想いなのに信じられてません。だから自分らと瓜二つな津軽とサイケが付き合ってる事実がやなんです。つまり嫉妬。だからサイケのプログラムを書き換えました。意図的に。静雄に似た津軽が壊れるのは嫌だったので自分に似たサイケを壊す事にしました。また、もう両想いになれないなら死んだ方がマシだと、病んだ結果に至り、でも自殺は嫌だ、出来るならば静雄に殺して欲しい。だけど優しい静雄は自分を殺してはくれないだろうと踏みました。ならば静雄似の津軽に殺して貰おう、津軽はきっと新羅から原因を聞いて自分の元に来て恋人を失った怨みを向けてくれるだろう、と。

一番可哀相なのはサイケみたいな。


話も長ければ補足も長い(笑)取り敢えずこんな話を漫画で書きたかったので最初に小説してみました、因みに話自体は途中のタイトル名部分で終わってます。

続きます←



(contrast dream)
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