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最近、ルシウスとナルシッサは私を家から出そうとしない。
どこかピリピリとした空気がただよっており、世間では何かあるに違いない。ちなみに、予言者新聞は私の目の届かないところに置かれている。ルシウスの手が回っているせいか、セブルスやレギュラスにせがんだところでも無駄だった。
そうなると、唯一ルシウスの意志が及ばない場所に駆け込む私は随分ずる賢い子供ということになる。

「・・・そうむくれるな」
いくら私が子供だからといえ、情報から離されるのは納得がいかない。それに、悪いことが起きているんだったら、むしろそのことを把握していないと危ないのでは?とも思うのだ。
「お家の外にでられないんだもの。お家の外に小さな森があるんだけど、そこもダメって」
立派なソファーで足を汲み、肘掛にもたれて頬杖をつくのは美しきヴォルデモート卿。
そう、父も母も唯一この人には逆らわない。
私がドビーに頼んで手紙を届けてもらうと、彼は快く自分の屋敷に私を招いてくれた。
「ねぇ、どうして?」
すっかり軽口を叩くようになった私に、ヴォルデモート卿は「鋭い子だな、お前は。」と呆れたように言った。

「連日、子供が攫われている」
「え?」
「魔法族の子供が親が目を離したすきに、な」
「だれが?」
「分かっていたら、すぐにでも魔法警察が捕まえるだろう。それに単独犯とは思えない」
ヴォルデモート卿に掛かれは、このくらいの事件はすぐに納まりそうなものだ。
しかし、そんな私の考えを読んだようで彼は「魔法省の連中は、こちらが犯人ではないかと疑っているらしい」と言った。

「え。貴方が犯人なの?」
「そんなわけがあるか」
「・・・疑われているの?」
「そうなるな。だが、まともに取り合っていても仕方あるまい。事実、攫われている子供の多くが向こう側だ」
「向こうって」
「私の味方ではないということだ」
まぁ、お前には難しい話だ。と、彼は鼻で笑った。

「・・・いいかげん、仲直りすればいいのに」
「何か言ったか?」
「いいえ、なにも」
私はテーブルの上のチョコレートをとって、口の中に頬張った。


「捕まえられるなら、捕まえてほしいけど」
「私にか?」
「だれでもいいけれど、早く遊びたいもの。もうすぐ森の木イチゴがなりそうだったんだもの」
そう伝えると、ヴォルデモート卿は「ルシウスには監視を甘くするように言っておこう」と笑った。
「ほんとう?」
「ああ」
嬉しい約束をしてくれた彼にお礼を言って飛びつけば、ヴォルデモート卿は「重くなったな。」と言いながら私を受け止める。
抱き付いても怒らないのは、レギュラスと同じだ。
「だが、もしもお前が攫われても責任はとらないぞ」
「捕まった時は助けてくれる?」
「良い子にしていればな」
ヴォルデモート卿は私の鼻先を指でつついた。
「む」
「だが、相手もブラック家とマルフォイ家に所縁のあるお前を攫おうというのはよほど血迷っていると言えるだろうな」
「パパもレギュラスも強いものね」
「犯人が生きていられるか疑問だがな」

ナギニが部屋の隅で賛同するようにシューシューと鳴いた。


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