クロム×マイユニ

※クロム少し病んでます
※少し無理矢理です
※流血表現含みます


軍師だというのに、不覚にも背後を取られた

肩から背にかけて斜めに振りかざされた敵の剣

致命傷には至らなかったもののそれなりの痛みが走る

ちょうど戦闘もひと段落したところだったので自分の天幕へ戻って治療にあたった

衣類を脱ぐと乾いた空気が傷口に直接触れてピリリと痛みが走る

コートの背は見事に剣の軌道に沿ってほつれ、赤く滲んでいた

「うーん、今度セルジュさんに修繕をお願いしますか…」

そんなことを呟きながら背中に手を伸ばす

身体は特別柔らかいわけではないので、中指と薬指をいっぱいに伸ばして手探りで薬を塗り始めた

その時だった

勢い良く開いた天幕の入口

薄暗がりに外の光が差し込む

そこには後光を背に立つシルエットがいた

「…クロム、さん?」

後光が眩しくて顔があまり見えない

返事も無い

でもそのシルエットを見れば、気配を感じれば、私にはすぐにそれがクロムさんだと分かった

無言のまま中へ入ってくるクロムさん

突然の訪問に唖然とした後、何も身に付けていない自分の上半身にハッと赤くなった

「ちょ、ちょっと待って下さい!今は駄目です!入って来ないで下さい!」

咄嗟に拾い上げたコートで胸元を隠し背を向ける

クロムさん、もしかして私を心配して様子を見にきてーーー…?

クロムさんの足音が背後に近付いてくるにつれ内心、少しドキドキした

私の真後ろで止まった陰

その中にすっぽり飲み込まれた私の体

真後ろにいるのに一言も発しない彼

期待の熱と口角が徐々に下がり、違和感で振り向こうとした

その時だった

「―――え」

背の傷口を伝ったざらりとした感触

反射的にびくんと跳ね上がる体

「え…え?」

何かが私の傷口に触れた

数秒遅れて、ぬめりとした生温かい感触が残る

背中から伝わる熱い吐息

ーーーもしかして…

「ひっぅ!」

立て続けにざらりとした感触が、今度は痛みを伴って全身を駆けた

「ク、クロムさん何して…っ」

ほぼ確信していたけれど、言葉を紡がずにはいられない

ーーーークロムさんに傷口を舐められている

言葉を交わすことも無く突然始まった行為に、恥じらいよりも恐怖と痛みが優った


「っ…痛い!」

三度目の舌遣いは力強くて痛かった

思わず前のめりに上体を逃がす

すると待っていたと言わんばかりに肩を押され、うつ伏せの状態に組み敷かれた

「やっ…ふざけるのはやめて下さい!」

痛みへの恐怖から、手足をばたつかせ抵抗する

しかし背後からの男性の力に勝てるはずもなく、両手は呆気なく後ろで一纏めに掴まれ、足は膝で押さえつけられた

「あっ」

四度目の感触

先程よりもずっと優しく、それとも私が少し慣れてしまったのか

ゆっくりと撫でるような舌遣いに、思わず頬が熱くなった


ゾクゾクする背筋

天幕に小さく響く鈍い水音

背筋を流れ落ちるのは冷や汗だけじゃない

彼の舌からも、伝ってくる

「〜っ、ーー」

少し心地良く思いかけていた時だった

吸い上げられた一番深い切り口の血


「ーーーー」


呼吸が出来なかった

全身を駆け抜ける壮絶な痛み

反射的に背中が仰け反り、節々から力が奪われていく

だらりと力無く床に伏せ、静かに痙攣する身体

目頭から自然と涙が伝う

「ーーーーぁ…あ…」

操り人形の糸が切れたようにだらりと垂れる両手首

数秒遅れて脳が「痛い」と認識したようで、余計に涙が溢れた

「…クロ…さ…クロム…もう、やめて下さ…」

力無い懇願

戦いが終わった時点で固まりかけていた自分の血が再び流れ落ちるのを感じた

その筋を再びなぞる舌触り

…どうしてこんなことになったの?

どうしてクロムさんは急にこんなことをしたの?

本当にこの人はクロムさんなの?

クロムさんの顔が見えないのが怖い

「んっ…うぅ…」

唇を噛み締め痛みに耐える

その分だけ涙が溢れ出た

天幕の中に静かに響く水音と私の耐える声

感覚が鈍くなり、涙も乾いてきた頃、突然背を這いずる感触が止んだ

「…?」

私の頭を撫でる手

唐突な優しい手つきに対し、心臓は破裂しそうな勢いのままだった

シンと静まり返る薄暗がり

髪を撫でる手が止まり、耳元に熱い息がかかる

「マイユニの血は…甘くて美味だ」

慈しむような優しい声

押さえつけられていた感覚が軽くなる

背中も温かい

もしかしたら、何か掛けてくれたのかもしれない

クロムさんの優しさに振り返る気力も湧かず、ぼうっとする意識で床の地平線を眺める

…埃っぽくて、汚い

そんな事を考えているうちに足音は遠退いていった

そしてとうとう聞こえなくなる

日常を取り戻した世界

取り残された体の震えをどうすれば止められるのか分からず、身を縮こませてそっと目を閉じた


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