ルキナ×マイユニ×クロム

夢だった

こうしてお母様と一緒に眠る事

「ルキナ、今まで一人でよく頑張りましたね…偉かったです」

優しい手つきで私の髪を撫でるお母様

自分に甘えその胸元にゆっくり顔をうずめた

お母様の良い匂いがする

「ずっと…こうしたかったんです…」

王女にしては少し幼稚な発言だったような気もしたけれど、お母様は微笑みながら優しく抱き締めてくれた

お母様の腕の中は優しくて温かい

荒れ果てた地上で嘆き望み続けた世界

眠るのが惜しくなる程の心地好さ

嗚呼、これが幸せというのでしょうか

心が少しくすぐったいです

「…お母様?」

私の髪を撫でるのをやめたお母様の手

顔を見上げれば綺麗に閉じられた睫毛

規則正しい鼓動が胸元から伝わってくる

…そうですよね

お母様は軍の指揮官ですもの

お疲れの筈です

…でも少し欲をかけば、もっと色々なお話がしたかったです

「…」

諦めてお母様のぬくもりにうとうとし始める

その時、扉から音がした

「マイユニ、居るか?
今後の陣形について相談があるんだが…」

私が大好きなもう一人の声

「お母様はつい先程お休みになられましたよ、お父様」

お母様を起こさないよう小声で伝えた

少し驚いたような顔をするお父様

でもすぐに穏やかな笑みを浮かべた

「そうか…邪魔をしたな、ルキナ」

「あ…」

引き返す扉に思わず制止の声を挙げる

…大丈夫、お母様は起こしてない

「お父様…我儘を言っても良いですか?」

扉口に立つお父様と目が合う

「お父様も今日だけ…
今日限りで良いんです、ここでお休みになって下さい」

一瞬呆然と立ち尽くすお父様

そして少し赤くなり吃る

言ってから、自分はなんて欲深い事を言ったのだろうと少し後悔した

でも次に目が合った時、その表情は優しくこちらを向いていた

「少し窮屈だろうが…我慢してくれ」

お父様が腰掛けた弾みで軋んだベッド

お父様は男性なんだなと今更ながら納得した

お母様の方を向いて横たわる私

その背後へお父様は寝転がる

そしてその大きな腕はお母様と私の二人をすっぽり収めた

お母様とはまた違った、力強くて、でもやはり温かい抱擁

「ルキナ」

ひっそりとした低い声

「…今日に限らなくても良いぞ」

少し照れくさそうな声色が珍しくて顔を見ようとしたら、一層強く抱き締められて確認するどころじゃなくなった

「お、お父様。少し苦しいです」

お母様も起きてしまいますよ

でもやめて欲しくない

望み通りその腕が緩む事はなかった

大好きな二人に囲まれて

こんなにも幸せを噛みしめて

笑みと同時に思わず温かい涙が零れる

「ルキナ。また、明日だ」

漸く重くなってきた瞼

明日は誰が一番早く起きるのでしょうか

お母様だったら、きっと顔を真っ赤にして驚くでしょう

私が一番に起きてしまったら…狸寝入りをしましょうか

「おやすみなさい。お父様、お母様」

こんな幸せな未来が、永久に続きますように


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -