クロム×マイユニ
いきものがかりさんの「ブルーバード」とラピュタの冒頭が好きすぎて書いちゃいました。
頭から真っ逆さまに落ちる自分の身体
空から落ちて、どれくらい経ったのでしょうか?
ビュウビュウと空気を切り裂く音が耳を掠める
引力に身を委ねたまま一面の空を突っ切るのは思いのほか気持ち良かった
随分高いところから落ちたんですね
鳥すら居ない
雲もまだ見当たらない
今ここにいるのは私だけ
心地好い孤独感
背に照りつける太陽が暖かい
空気が薄いからでしょうか
それとも気持ちの良いお天気日和だからでしょうか
少し、眠たいです
真っ逆さまに落ちている当人とは思えない能天気ぶりにクスリと口元が緩む
けれど眠いものは眠いのだから仕方がない
いつも理屈っぽい私だけど、誰もいないのを良い事にそっと瞼を閉じた
…そういえばクロムさんと出会ったあの日も、今日みたいに良いお天気でしたね
暖かくて、白と青のコントラストが少し眩しくて、目を細めたのを覚えてます
クロムさんの手に思いっきり引っ張られて、すごく顔が近くて…
なんて力加減が下手な人なんだろうと思いました
でもそれは単純に力の話だけではなく、日を重ねる毎に分かったんです
クロムさんはすべてが力強い
訓練で壁を壊す力も
人への接し方も
生き方も
私への愛情も
どこぞの馬の骨かも分からない私を、一番の友だと言ってくれたクロムさん
裸を見た時、顔を真っ赤にして謝っていたクロムさん
式の時、私を真っ直ぐ見つめて微笑んでくれたクロムさん
脳裏をよぎるのはクロムさんの顔ばかり
いつの間に私の記憶は、こんなにクロムさんでいっぱいになっていたんですね
ーーークロムさん、会いたいです
刹那、ピリリと冷たい冷気が肌にぶつかった
そろそろ地上が近いのかもしれない
目を閉じているからこそ感覚が研ぎ澄まされる
雲にぶつかった時の露
風の音
木々の香り
耳を擦る空気の抵抗が弱くなる
そしてとうとう無音の空間に包まれた
まるで無重力状態
トクントクンといつも通りの間隔で鳴る鼓動
ここはーーー走馬灯の世界とでも言うのでしょうか
落下する直前、死ぬ時に見える空間なのでしょう
最後に自分と向き合えるように
でも…私にはまだ早過ぎますね
なぜなら…
ふわりと軽くなった身体
何かが背に当たり、続けて膝裏が少しくすぐったくなった
そして力強く包み込まれる
「マイユニ」
その呼びかけに、長いこと閉じこもっていた一人の世界からそっと目を覚ます
…嗚呼、やはり貴方だったんですね
貴方は私が不安な時、抱きしめてくれた
私が困っていた時、一緒に悩んでくれた
私が泣いていた時、そばにいてくれた
貴方はいつも必ず私を見つけ出してくれるから
だから私は、落ちる事が怖くなかったのですね
「信じてましたよ」
その腕に抱かれたまま、そっと微笑み返した
「ーーーークロムさん」