クロム×マイユニ

※「いいえ」選択ED捏造注意


俺とマイユニの意見が割れたのは、これが最初で最後だった

「貴方が私自身だってこと…今は感謝してます」

マイユニの手の内には強大な魔力の塊

「こうして、大切な人たちのために自分の命を使えるんですから」

躊躇いの無いはっきりした言葉

それがお前の答えなのか

怯み後退さるもう一人のマイユニ

「一緒にいってあげます…」

まるで自分自身の罪滅ぼしをするように

マイユニの手の平から、最後の光が放たれた

「ア…アァァァ――――…!」

轟音とも言える邪竜の叫び声

それが天空を児玉するとほぼ同時に目の前が真っ白の光に包まれた

「っ…」

全てを“無”に還すような光

眩し過ぎる白の世界に目を細める

それは限りなく長く、しかし実際は一瞬の出来事だった

次第に開けた視界

まだ現実に慣れない目に映ったのは一面の夕暮れ

そして、マイユニの寂しげな背中

その姿を捕らえようとすると地平線が目に染みた

黒い影が淡い燈色に紛れ溶けてゆく

俺の愛しい存在も、世界から消えてゆく

「待て!駄目だ!」

宛ても無く駄目だ行くなと声を張り挙げる

無駄な事だとは分かっていた

手を伸ばしてみるが届かない

伝えたい事が山ほどあるのに上手い言葉が見つからない

まだ愛したいのに、叶わない

「クロムさん」

刹那、マイユニが振り返った

消えかかった足を使ってゆっくりと俺の方へ歩みだす

「最後に…お願い、聞いてくれませんか?」

マイユニの発した『最後』という言葉を心が拒絶する

鉛のように重い心身

思考するのが苦しく、その声にすら応えられなかった

一歩、また一歩追い風と共にマイユニが歩む度、消滅の時効が近付く

手を伸ばせばすぐの所でマイユニの足は止まった

ただ、一言

「…抱き締めて下さい…」

マイユニの望みは、世界を救った天秤とはあまりにも釣り合わない、小さく儚いものだった

返事をする間も無く本能のまま動いたのは俺の腕

抱き寄せるようにマイユニの身体を自分の胸に押し付ける

言葉に出来ない想いを両腕に託して

その存在を噛み締めるように力強く抱擁した

「…クロムさん…」

消えかかった手でそっと俺の服を握り締める

不意にマイユニと視線が交わった

どちらとも言わず自然に唇を近付ける

触れる程度の接吻

ほんの一瞬だった

それが恋人として満足させてやれるものだったかは分からない

だが唇が離れた頃、マイユニは穏やかに微笑んだ

「また…会いたいですね」

そして

腕の中から、温もりが消えた

時が止まったように静かな空

これから夜が訪れるというのに鮮やかに澄んでいる

俺の腕は未だ、虚空を抱き締めていた

意外と強情なマイユニの事だ

あの時止めたところでその手を引っ込めるつもりは無かったのだろう

…だが、それでも

お前にイーリスの収穫祭を見せたかった

お前を幸せにしたかった

お前と幸せになりたかった

…マイユニ、覚えているか?

最初お前の事を女とすら思っていなくて、失礼な奴だと怒らせた事

沐浴に遭遇して初めて女だと意識した事

気まずくて、こっ恥ずかしくてまともにお前の顔を見れず軍議を行った事

姉さんを失い立ち直れなかった俺を、お前がずっと隣で支えてくれていた事

俺を受け入れてくれたあの日の事

いつの間に、こんなにも愛しくてかけがえの無い存在になっていた

だが今、俺には新しい未来が迫っている

マイユニと生きた証は徐々に新たな記憶に上書きされてしまい、そしていつか、お前は本当に居なくなってしまうのか

嫌だ

そんな事は、させない

させるものか

確かにお前はそこに存在した

俺の最高の相棒として、半身として、伴侶として

確かに俺の隣に居たんだ

例え世界がお前を忘れようと、俺はお前を忘れない

「…なぁ、リズ。こんな綺麗な刻限を見たのは、いつ以来だったか?」

今日という日を、この時を、睨むように目に焼き付けて

これが俺達の望んだ“平和”の果ての姿なのか


世界の救世と共に見えたのは、マイユニのいた世界の終焉









―――――Xの世界



……

…うう、ん…

…眩しい…です…

もう目を開けなければ…


「こんな所で寝てると風邪ひくぞ」

やっぱり…眩しいです…

後光が眩しくて顔がよく見えません

「立てるか?」

懐かしい声

懐かしい感触

大きくて温かい、手の平

「おかえり」



全てを“0”からやり直して



今度こそ必ず、幸せになりましょう


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