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夏は、暑い。
当たり前だけど、暑い。

本当に暑くて暑くて溶けちゃいそう。



「神楽ちゃん、大丈夫?」


夏休みも終わったというのに暑い。
机で突っ伏した私に声をかけ、パタパタと扇いでくれる姉御。

あぁ、涼しい。ありがとう、姉御。



6限が始まるチャイムが鳴って、パタパタ扇いでくれた姉御も席に戻ってしまった。


だるそうに、銀八先生が来た。
そういえば隣の席の沖田がいない。昼休みからいない。



「せんせー」

「あァ?何だー、神楽?」

「……沖田、いない。探してくるアル」

「………えっ?あ、……うん、よろしく」


銀八先生もクラスの皆も驚いてる。
だって、自ら探しに行くなんて今までにないから。

なんか、無性に沖田に会いたい。

暑くて動きたくなんかないけど、フラフラと教室を出て屋上へ向かった。

きっと、いるはず。



屋上に行くと、やっぱりいた。
日陰になっているとこに、変なアイマスクをつけて寝転がっている。

私は、その隣に座った。
途端、沖田は起き上がった。


「…起きてたアルか?」

「いや、今起きた…」


寝起きの沖田は、汗をかいていた。

そりゃそうか、こんな暑い外で寝るなんてバカだ。なんだやっぱりバカなんだ。


コツンと頭を叩かれた。

「…心の声、漏れってぞ」

「マジでか」


夏の熱い風が、ふわっと吹いた。
暑いけど、少しだけ、ほんの少しだけ涼しくなる。


「なにしに来たんでさァ」

「………連れ戻しに」


ボーッとして働かない頭の中で、あぁ、素直じゃないと思った。
そう思いながら、口は開く。


「沖田を、連れ戻しに来た」

「うん?今さっき聞いたけど。銀八にでも頼まれたんだろィ?…あーめんどくせェ」


違うヨ、違う。私が、沖田を連れ戻しに来たんだってば。


「お前が、隣にいないから来たアル」


隣で少しだけ、沖田が動いた。
あー、暑い。本当に暑い。


「隣にいないから。会いたく、なって…」

「…うん」

「屋上に来たら、いた」


沖田はそっか、って言って私の頭をぽんぽんと撫でた。
それが、心地よくて嬉しくて何だか痒い。
普段ならしないでしょう?

あぁ、でも限界。もう無理。


「沖田………暑い、アル」

言って意識を手放した。





目を覚ましたら、白い天井で薬の匂いがした。


「熱中症、だって」

不意に隣から声が聞こえた。
沖田を見ると窓の外が目に入って、どれだけの時間が経っていたのかを思い知らされた。


「…今まで、いてくれたアルか?」

「ん?あぁ…だって、お前俺に会いたくて暑いなか俺を探しに来たんだろ?」

「…うるさい、アル」

「ははっ……うん、俺好きだけど?そういうとこ」


やっぱり、暑い。夏は暑いんだ。


「意味、分かんないヨ。お前も暑さにやられたのか?」

「そーかもなァ、お前にやられた。ずっと前から」


そうか、暑いのも。会いたくなったのも。
夏のせいじゃない、きっと。



「熱中症の原因、私分かったアル」

「ふーん、何?」

「沖田のせい。だから、責任取れヨ」

「言われなくても」


軽く触れた熱すら心地よい。
じわじわと唇から広がって、全身熱くなるけれど、大丈夫。



今年の夏は暑い。例年より。

暑く熱い夏は、まだまだ終わりを見せない。


中症の原因


2012.08.23

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