原作
暑くないのかと言われれば、暑い。 だけど、反論する気もないから言わない。 でも、やっぱり梅雨明けは暑い。 黒い隊服は夏に合わない気がする。
市中回りも暑くてやる気が出ないからいつもの公園に涼みに行く。 あそこなら木陰もあるしいくらか涼しいだろう。
「‥あっちィ」
「そんな真っ黒な隊服着てるからヨ、見る方も暑苦しいネ!」
俺の目の前で番傘をクルクルと回しながらチャイナは言う。 いつからいたんだ、気付かなかったじゃねーか。
「さっきからいたアル」
「え、なに、お前エスパー?」
「違うネ、声に出してたアル」
そう言ってチャイナは俺の隣に座った。
「暑くて喧嘩する気も起きねェな‥」
「‥普通に喋るのもいいアル。何か喋れヨ」
「いきなり言われてもねィ‥」
最近は喧嘩が少なくなって、普通に話すのが増えた。 相変わらず暴言は絶えないが。 最初は俺達が普通に話すっていうのに違和感を感じたが、結構話題はある。 この前時間も忘れて話していたら日が沈みかけていて、俺達を探しに来た旦那と土方さんが驚いていた。 こっちだって驚いている。 いつ、どうなって、俺達が、普通に、話すように、なったのか。
分からないけど、いい。 喧嘩だけじゃなく普通に話すのも。 お互い分かってきた気がするから。
「ねぇ、何かないアル?」
「あ?じゃあ、好きな季節は?」
思い付かなくて咄嗟に言った。 何でィ、好きな季節って。
「‥夏。夏が好き、アル」
「なんで?お前、太陽苦手じゃねェか」
そうだ。こいつは太陽が苦手なんだ。 なのに、太陽がガンガンと照らす空の下、暑い日に外に出るなんて、自殺行為じゃねェのか?
「‥番傘あるから平気アル」
「‥ふーんって、声に出てたか」
「いまさらネ」
チャイナはクルクルと番傘を回す。 どんな表情をしているかよく見えない。
「あ、それで?理由は?」
ピョンとベンチから降りたチャイナは俺の目の前に立った。 相変わらずクルクルと番傘を回しながら。
「‥夏は、お前に似てるネ。だから、好きアル」
それだけ言うと、今日はいつもより暑いから、もう帰ると言って公園から出て行った。
いつもより、少しだけ笑っていた気がする。ふにゃり、と。
暑い、いや熱い。 俺のとこだけ5℃ぐらい暑くなったんじゃねェか?ってくらい。
空を見上げた。 雲一つない青空で眩しい。
きっと今年は熱い夏になると思った。
体温急上昇
2010.06.20
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