柄にもないことをしてみようかと思う。
旦那や土方に見られたらゲラゲラと爆笑されそうだ。
多分、あいつも笑うかもしれねぇなァ。
そんなことを考えながら、足早に店を出た。
公園に着いていつものベンチに座った。
春が訪れている。
ぽかぽかと暖かい日差しが気持ちよくて眠ってしまった。
目が覚めた時、目の前が青かった。
「あ、起きたアル。」
「‥え、あぁ。チャイナか。」
俺が目を覚ますとひょいっと退けて、隣に座った。
チャイナは足をぷらぷらさせながらどこか機嫌がいいような気がした。
「それにしても、お前がアイマスクなしで寝ちゃうなんて珍しいアルな!初めて見たヨ。」
「春みたいな陽気で眠くならないほうがおかしいんでさァ」
あ、そういえば。渡さなきゃいけねェ。
まだ完全に眠気から覚めない頭の中で思い出した。
「そーいやさァ、バレンタインチョコ、まぁ思ったより美味かった。」
「‥‥‥はっ!?い、いきなり、何アルか!?」
突然のバレンタインデーの話にチャイナは慌てている。
なぜか、こいつから貰ったのである。
そこらの女のように可愛らしく渡すでもなく、綺麗なラッピングでもなく。
手作りだと分かるラッピングで、しかもなぜか罵声を浴びせられながら投げられたチョコを俺は受け取ったのである。一か月前に。
「いやー、罵声浴びながらチョコ貰うなんて初めてだったなァ。」
「あ‥‥よ、良かったナ!」
ふんっとそっぽを向いた。俺はその様子に笑った。
チャイナ、と声をかけて俺は立ち上がった。
右手に黄色やオレンジの可愛らしい花束を持って。
「これ、お返しでさァ。」
ゆっくりチャイナは花束を受け取った。
「食べ物が良かったかもしんねェけど。」
「‥‥‥う、ううん。お、お前が花束くれるなんて思わなかったヨ‥。」
柄にもないことをした。
黄色やオレンジの花束を両手で持つ、そのピンクの髪と赤く染まった頬のチャイナはなんていうか可愛いって思った。
花束を贈った14日
▼03/09拍手お礼文更新
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