◆勘違院

 花京院は手紙やなんやで呼び出しを受けた際、ハイエロファントを同行させてそれに応じる。この呼び出しと言うのは女子からの呼び出し限定だ。男子であればケンカになるだろうが出来る限りスタンドなしで応じている。女子ならば十中八九告白だ。このハイエロファントの姿が見えなければ相互理解など出来やしない。見えない女子の告白は、容姿性格に関わらずお断りするつもりだった。
「花京院くん、ちょっといいかな」
 人気のない場所に呼び出された花京院は、道中でハイエロファントを出した。たまに、空条くんにこの手紙渡してください、という勘違いもあったが、花京院自身もなかなかにもてる。
 つれてこられたのは美術準備室だった。室内にある像や絵画の人物だけが二人を見ている。
「これ、この絵って花京院君が描いた?」
「え?あ、あぁ……」
 それは趣味で描いていたもので、授業や部活動でもないのに準備室の一画を独占していたことが邪魔になってしまっていたのだと思い、勘違いも含めて花京院は恥ずかしくなって謝った。
「ごめん。邪魔だよね」
「あ、全然違うの。ただ、すごく綺麗な絵だから、文化祭のときに展示したいなーって思って」
「光栄だよ。美術部の部長さんにそう言ってもらえるなんて」
「ありがとう。じゃあ文化祭まで預からせてもらうね」
「すまない」
「ううん。こっちこそごめんなさい。呼び出したとき、すごく緊張っていうか、気を悪くさせたみたいで」
 花京院の、告白してくる相手を試すかのような心理を彼女は見抜いていた。罪悪感という棘がチクリと胸を刺す。同時に、ひょっとしてこの緑に光る彼を目視しているのではないかとすら思う。あまりにも、彼女は自分のことを理解しているから。
(いや、そんなことはない。見えない人に、理解してもらえるわけない)
「文化祭終わったら持って帰ってもらうか、あとはここに飾るか、どっちでもいいから」
「うん……あの」
「なあに?」
「急に君の事が気になった。もっとよく君を知りたい。好きに、なりかけている気がするんだ。付き合ってくれないかな」
「……好きになる前だけど付き合ってくれって、珍しいね」
「嫌かい?」
「ううん。私もたった今気になり始めてきたかも」


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