小説 | ナノ

 香港で出会ってまだ数日。しかしポルナレフはあっという間にメンバーに溶け込み、ムードメーカーとしていなくてはならない存在になっていた。軽口を叩いては花京院に小言を言われ、ジョセフと一緒にバカをやり、それをアヴドゥルがたしなめ、承太郎が「やれやれ」と小さく笑う。
 そんな一行の空気が好きで、自分の暴走し始めた感情でぶち壊したくなくて、公子はその想いを胸に秘めたまま歩いていたつもりだった、が。
「え、隠してるつもりだったのかい?」
 花京院が悪びれもなくそう言うものだから若干傷ついた。
「ごめんごめん、そういう意味じゃなくて、えーと、とにかく気づいてないの本人だけだから思い切ったほうがいいと思うよ!」
「思い切るって……どうすればいいの?」
「そうだな、例えば……」

オペレーション:マーメイド

「生足を見せるとか」
「ポルナレフさんはそんなことで興味持つような人じゃないよ」
「えっ!?」
「え?」
「ああ……いや……」(そういえば公子の前で下品な話絶対にしないよな。アンちゃんの前だとするんだけど)
 無垢な公子の瞳が、誤解を解くことを躊躇させた。それにポルナレフの女好きを語れば語るほど自分が嫌われてしまいそうだ。
「と、とにかく、公子は普段ズボンで絶対足見せないから、急な変化にぐっと来るんじゃないかな。そういえば、制服はどうしたの?」
「戦って破れたから捨てた」
「そ、そう……」(駄目だなこれは)

オペレーション:ランガン

 ジョセフがスッと公子の後方を指した。そこにはアンとポルナレフが楽しそうに話す姿がある。
「公子」
「はい?」
「そこにポルナレフがおるじゃろ?」
「ちょ、ちょっと待ってください。その語り口がすごくいやな予感しかしません」
「行って来い。そもそも日本人はその辺がどうも奥手過ぎる!」
「じじぃ、日本人と何かあったのか?」
「……行くのだ、公子!」
「はっ、はいぃぃ!」
 遠目からポルナレフと公子(と、アン)を見守るおっさんふたりと男子校正二人。最初は恥ずかしそうにもじもじしながら話していたが、次第に公子を交えて三人で談笑をはじめた。
「これは……あれですね」
「普通に喋って終わる。いつも通りか」

オペレーション:オラクルクルセイダース

「どれ、私が占ってやろう」
(最初から本職にお任せしてたほうがよかったかも)
 マジシャンのような華麗な手さばきでタロットカードを切り、いくつかの山に分けられたカードの中から公子は直感で選択する。
「これは……」
「どうなんじゃ、アヴドゥル」
(世界の逆位置っ……これが示すものは、失敗・挫折・低迷・停滞……)
「あ、あの。大体顔で分かったんでもういいデス……」

オペレーション:je t'aime

「さっさと言やいいんだよ。言いもしないで察してくれなんて都合のいい話だぜ」
「な、なんて言えばいいと思う?」
「……」
「承太郎、答えなよ」
「承太郎、言ってやりなさい」
「承太郎、公子が困っているぞ」
「テメェら……」
「ねえ。皆ならどういわれるのがいい?」
「……ジュテームでいいんじゃない?」

 ヒトヨンフタマル。午後のティータイムにかこつけ何とかポルナレフと二人きりになることに成功した公子。震える手でカップを握るものだから、カタカタと音が鳴った。
「ん?どうした、公子」
「え、えっと、ね。あの……」
「言いにくいことか?そういうときはまず大きく息を吸う。はいっ」
 すぅーっ。
「もっと」
 すーっ。
「もっともっと!」
 うううううううううう……。
「さあっ、吐く代わりに言いたい事を言うっ!」
「ふひゅーーーてーーーむ!」
「ん?」
「え、あの……じゅてーむ
「なぁんだ、フランス語の練習してたのか?確かに、アクセントはなかなか難しいがフランス語は世界一綺麗な言語だぜ。俺が教えてやるよ。ちなみに世界一美しいのは日本語だぜ?」
「え、あ、うん。ありがとう!」
「いいか、愛してるってのはな、こう言うんだ。je t'aime. Je ne peux pas vivre sans toi.」
「じゅ、じゅてーむ……じゅ、ぷ?ぱ?そんとわ」
「公子……Je t’aime au delà de la raison.」


オペレーション、コンプリー……ト?


prev / next
[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -