小説 | ナノ

「兄さんいつからバスケ部に入ったの?」
「今さっきだ。この試合が終わったら退部するがな」
 今日の放課後どうしても体育館コートを使いたい男女バスケ部は、3on3の勝負に使用権を賭けようということになった、の、だが。
 男子バスケ部は誰一人としてこのコートに立っていなかった。女バスからエースの徐倫、キャプテンのエルメェス、そして公子の三人が受けて立ったのだが……。
 男子のメンツはというと、帰宅部の承太郎、帰宅部のジョセフ、帰宅部のポルナレフだった。
「帰宅部しかいねぇじゃねぇか!」
「面白そうだったので」
「うるせぇ!徐倫、公子、こいつらが何部とか関係ねぇ!叩きのめす!
「いや、さすがに無理でしょ。デカい。壁じゃん、もう」
「あらー、公子ちゃんってばリタイアしちゃうの〜?」
「は?」
 ジョセフの単純な挑発に、公子は一瞬で目が据わった。今まであれだけブチ切れていたエルメェスが冷静になるほどに憤怒が見て取れる。
(徐倫、公子が臨戦態勢になったからこれはもう無理だわ)
(やるしかないかぁ。男バスはあとで別にしめとこう)
 こうしてやる前から勝敗が決まっている勝負をすることになった。コイントスの結果、女子チームからの攻撃となる。
 公子はボールを床についてウォーミングアップをはかる、というより、ボールを地面に叩きつけて怒りを発散させているようだ。ピッと短くホイッスルが吠えると、巨漢三人に迷いなく突っ込んでいった。そこに集中する三人。
「公子っ、出しな!」
 当然パスでその場を凌ぐ。ジョセフの脇を抜けて飛んでいったボールはエルメェスの手に収まり、そこから綺麗な弧を描いて華麗なロングシュートを決める。ゴール下で徐倫が待ち構えていたが、リバウンドの必要はなく、リングに掠りもせずにネットを揺らした。
「ナイッシュ!」
「おう……なぁ、徐倫」
「ん?」
「見てみ」
 落ちたボールを回収しながら、公子の方を指差した。
「てめぇら、何でボールを追いかけねぇんだ!」
「俺は公子をマークしている」
「俺もだ」
「ダブルチームってのはボール持ってる相手にするもんだろうが!パス出したらとっとと移動しろ!」
「俺が公子をマークしておく」
「いや、俺がするぜ」
「俺だ」
「あ?」
「んだとてめ……ぶっ」
 いい加減攻撃を始めない男子チームにボールを投げて寄越した。承太郎の後頭部目掛けてわざと投げたのは、妹である。
「さ、どんどんいきましょ」

 結局のところ開始数秒で弱点を見抜かれ、そこを重点的に突かれた男子チームもとい帰宅部チームは、あっという間に点差を付けられ敗北に追いやられたのであった。
「今日のMVPは公子、アンタね!」
「何か納得できない……」


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