「助けに来たで、なあ」
今更やけど名前、教えてや!なんて眩しく笑う褐色のひとに、俺は初めて神様を信じた。
「アントーニョ、来たで」
口を開こうとしたらその隣にいた、俺とさして年も変わらなそうな女の子が呟いた。何事、と前を見ると、
「困りますねぇ、その子、今傷ついてるんですよ?」
思わず背筋からぞわっと鳥肌が立った。
大嫌いな黒髪、声。一度は止まった涙がまたぶり返して、視界がぐちゃぐちゃになった。
傷ついてるんです、だなんて、誰のせいだ誰の誰の誰、の。
「…ほぉ、お前が傷つけたんか」
ぶわっ、と彼の纏う空気が変わったのが分かる。
なんだ、この気持ち。今までこんなこと言ってもらったことがないからか、俺の心には彼の言葉が酷く残った。
「待ち、アントーニョ。あんたは檻壊したってぇな」
あたしじゃ壊せん。二つの意味を含めた言葉は、なにもかも優しくて。
そのことにはっとした褐色の彼がこちらに向き直って、手にしていた身の丈ほどの鎌のような、斧のような物を振りかざした。
「今出したるからな!」
必死な金属音に混じった声は、斧よりも強かった。