「望みはなに」



間もなくして連れて来られた、大きなガレオン船。二人ならんで歩ける程度の狭い通路で、どうしてあたしを選んだんだ、その意味を込めて吐き出した言葉は、こいつが鼻で笑ったことによりかき消された。


「お前の、その目だ」


目、とはこのアメジストのことだろうか。あたしからしたら周りはこんな色ばっかりだったからあまり気にしたことは無いけれど、なんて考えていたらまた馬鹿にしたように笑われた。


「色じゃねぇ、その目つきが気に入ったんだ」


目つき。なんて風変わりな。


なにはともあれ、あたしはこの大英帝国と名乗る男に気に入られたようだ。これでしばらく雑用さえしていれば普通に暮らせるかもしれない。…いや、雑用はめんどくさいな。


「あたしは何をすればいいの」

幾分かあたしより高い身長に問いかけると、ぐいっと肩を抱かれて一つの部屋に案内された。乱暴なのに変なところは紳士なんだな、この人。

とにかくその部屋を見渡すと、一面ドレスや宝石がばらばらと大量に放ってあった。なんだこれ、これだけあれば下手したら一生遊んでくらせるんじゃ。


あたしが口を開けていると、おもむろにずかずかとその部屋に入り込んだ大英?だかなんだか言う人は、適当に見回して一着のドレスを手に取ると、おら、とあたしに押し付けた。

そして近くにあった宝石が散りばめられたアクセサリーも一緒に押し付けてきたので、思わず何ですか、と口からこぼした。

「何って、お前の」
「…こんなのいらないわよ」
「は?」


あ、なんか気の抜けた顔してる。今まで見たどの顔よりも素っぽくてなんか面白い。あ、戻っちゃった。


「いらないって、女なら喜ぶだろ普通」
「なにそれ。とにかくいらないからね」


数秒の間。あらら、もしかして怒らせた?なんて少しびびりながら考えていると、またもや、今度も心底楽しそうに笑ったもんだから気味が悪い。




そのままふっ、と視界から彼が消えて。しなやかにあたしの手を取ったと思えば、あたしの手を持っていない方の片手を後ろに回した。まるで王子様のような振る舞いが、なんだかむず痒い。

そんな体制にも関わらず、相変わらず口から出たのは乱暴な口調で、そう、















「今日からお前は、俺の女だ」

















なんて手の甲に口付けられたものだから、ああ胸が痛いわ!














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