5月23日


「なぁなぁ子供、今日って何の日なんだ?」
「また来たよ」
「なーってば、今日は何かあるのか?」
「もう、邪魔だってば」

そういって、お馴染になりつつあるクローゼットから出てきた彼らだったが、カレンダーを見ても何も書かれてはいなく、イベント時ではないのに何故?と思っているらしい。
が、そんなことは関係ないというように、興味ありまくりです。とでも言いたげに今日は何かあるのか?何の日だ?と聞いてくるのは小平太だ。

こっちだって、これからデートだというので出かける用意をしているところに登場した彼らを誰が好んでもてなすか。
そう心の中で誓った子供は、化粧は大丈夫かどうかなど確認をしている様子を小平太以外静かに見ていたが、子供がよしを鏡から視線を外したその時、静寂は終わった。

「もそもそ」
「ん?何か言ったか長次」
「子供・・・・・逢い引き」
「え、子供ちゃん逢い引き?」
「今からか?どこに行くんだ?」
「ほう、この時代の逢い引きには興味があるな」
「ま、子供の年齢を考えれば逢い引き位しているだろう」
「みんな五月蠅いです。そして、興味は持たなくていいので、雑誌を見ないで下さい」

あと、連れて行きませんよと一括して出て行こうとする子供をあわてて引き留める小平太。

「子供待ってくれ、結局今日は何の日だ?私はそれが知りたいんだ」
「今日?別に知らなくてもかまいませんよ。それに、知っている人も少ないですし」
「浸透していないということか」
「そうですね。カレンダーにも記載されていないくらいで、知っていたとしても街中でイベントを行っているわけでもないのでどうでもいい日です」

そんなくらいの日なのに自分たちは来れたのか、きっと節分のようにバレンタインのように楽しい日だと思っていた小平太は隠せないくらいにガッカリして、その背中を長次がさすって慰めていた。

そのあとすぐに、時間ないからといって出て行った子供は、彼らに鍵を閉めることと、自分たちの世界に早く帰ってねと言うと家を出て行った。

「結局何の日かわからないままだね」
「どうする?帰るか?」
「いやだ!」
「でもよ、子供いなくなっちまったし」
「・・・・・大人さんがいる」
「確かに、大人さんの気配はある」
「そうだな。このまま引き下がるのもどうかと思うしな」
「では、決まりだな」

そういったのは良かったが、皆して2階を見つめた。

「でも、大人さん寝ているね」
「あぁ、無理に起こすのはな」
「よし、起こそう!」
「何でだよ!小平太は人の話聞けよ」
「えー。長次どうする?」
「待つ」
「起こさないのか?」
「待つ」
「いつ起きるかわからないんだぞ?」
「待つ」
「でも、暇・・・・・」
「へへっ」
「よし、待とう」
「(やはり、長次には勝てないか…)では、待つことにしよう。文次郎お茶をよこせ」
「普通に、命令するんじゃねぇよ」
「あ、お茶なら僕が入れるよ」
「伊作、手伝う」
「ありがとう長次」

少し和やかな空気をまといながらキッチンへと向かった2人を見送ったが、すぐさま小平太が声を大にして問いかけた。

「なぁなぁ、お茶菓子とかないのか?」
「我慢しろ」
「えー。我慢できない!長次ー?」
「はぁ、持ってきた団子がある」
「やった!食べていいか?」

コクンと頷くのを見て、お茶もまだ来ていないのに待ちきれないのか、頬張りだした小平太に見つめていた文次郎も仙蔵も留三郎も呆れていた。
そこに、お茶を入れて戻ってきた長次と伊作だが、足を引っ掛けてこけそうになった瞬間、さすが忍者のたまごらしく素早く自分たちのお茶だけを取り上げて、床へと倒れ込んだ伊作は、僕もかばってほしかったと小さく呟いたのを仙蔵は笑いながら見ていた。



「あ」
「あ、大人さん。お邪魔しています」
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう留」

で、今日は何しにきたの?と言いながら長次から受け取ったお茶をすする大人。
一息ついたところを見計らって、話題を切り出した。

「こうしてこちらに来られたのは、何か行事があると思っているのですが・・・・・」
「今日が一体何の日かわからずじまいで困っていまして」
「今日?」
「はい。大人さんはご存じではないのでしょうか?」

今日?と口にしながら考える大人を期待した目で見る彼ら。
調べるかと言いながらPCを立ち上げていると、やっと知ることが出来るのかウキウキしているのが手に取るようにわかる。
そして、調べ終わったのか、いつしか自分で入れた飲み物を飲みながら爽やかな笑顔を浮かべて立ち上がった。

「よし!まず2人組を作る」
「作ったぞ!次はなんだ?」
「小平太落ち着け」

「次に、少し距離を縮めて、向かい合って立つ」
「ふん。勝負するみたいだな」
「文次郎が私に勝てると思っているのか?」

「そして、視線を合わせて…睨み合う」
「留さん。本気で睨まないでよ」
「本気じゃねぇよ。元からだ」
「「「ぷっ/へへっ」」」
「笑うな」
「視線外すなよ」

「次は、私だな。動かずに待ってろよ」

そういうと、立ち上がって小平太の後ろを通るときに、渾身の力で小平太の背中をドンと押した。
もちろん睨み合っていた二人の行く末は。

「「んーっ!」」
「「「「!!」」」」
「よし、次!」
「「「「待て待て待て、ちょっと待て」」」」

・・・ちょっと、松・・・

「んじゃ、次は仙と文次だね。行くよ」
「いやいやいや、冗談はいりませんから、待ってください大人さん」
「大丈夫よ。何事も勢いよ」
「そういう問題じゃねぇ!」
「そうですよ」
「なんで、あ、あんなことを」

行事が知りたいと言ったのは君たちだろう?と言いながら首を掲げる大人に、口元を引き攣らせる4人と、落ち込み中の2人。

「今日はキスの日だ」
「キスとは?」
「・・・・・時代って面倒くさいな。あー、あれだ。接吻」
「マジ!!」
「そんな日があるのか」
「でも、女性としたいです」
「残念だな。同性だけとされている」
「「うそぉ!(未来って怖い)」」
「(それよりも、おい仙蔵)」
「(あぁ、あの小平太だけじゃなく、長次も怒りもせずに落ち込んでいる)」
「(そうとうショックだったんだな)」
「(さて、このままでは私たちも危険だ)」
「(わかっている。いちにのさんで行くぞ)」

感想はどうだった?と聞く大人さんが長次にポンと慰めに入っていた。
そして、立ち上がり、飲み物を飲んだ瞬間、彼らはタイミングを計り、一気にクローゼットへと逃げ去って行った。

「ただいまー」
「お帰り。どうだった?」
「楽しかったよ。でも、大人さんも楽しそう」「まぁね。時期外れのエイプリルフールってのをね」
「へー(そう言えば彼らがいない・・・・・何をしたかは聞かないのが正解かな)」



一方。

「長次、襟元に何か挟まってるよ」
「大人さんの字」
「どれ、読んでみよう。ほら文次郎読め」
「はぁ。えっと、接吻の日は本当だが、同性は嘘。君たちが来なかった4月1日のエイプリルフールと言われている嘘をついていい日も混ぜ合わせてみた」
「「「「「・・・・・」」」」」
「暇な休日が楽しかったよ。ありがとう。だとよ」
「やられたな」
「大人さんには敵わないね」
「私は、口洗ってくる!」
「一緒に行く」
「つーか、過ぎた日を合わせるとか反則だろ」



2012.5.24
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