バレンタイン


「今日はバレンタインというやつらしいな」
「私もチョコレートと言うのがほしいぞ」
「もらってやらんこともない」
「嫌なら来るなよ。俺はもらいたい」
「えっと、ごめんね。でも、僕も出来れば欲しいかなぁ」
「・・・もそもそ」
『『・・・・・』』

黙り込んで、どうかしたのか?なんて涼しげな顔で、私たちを見つめてくるその顔を殴ってやりたいと思ったのは何度目だろう。
それよりも気になることはある。

『なんで居るんですか?』
「なんだ子供。居ては問題でもあるのか?」
『帰ったのに、こっちの時代に来ないで下さい。そんなホイホイ来れるっていうのはどうかと思うし、なんで毎回クローゼットから出てくるのさ!』
「あぁ、やっぱり子供ちゃんもそう思うよね」
「それは俺も思っていたんだがな」
「最初はさすがに、女性の衣類があるから戸惑っちゃったけど」
「慣れだ。鍛錬さえすれば何とも思わない」
「ほう。まだ顔が赤いのは気のせいか?」
「う、うるさいぞ」
「文次郎、照れるなんて気持ちわるいぞ」
『話を聞いて!だいたい、どうして来るのですか?』
「学園から少しした場所にある湖に映る月が青く光っているときに湖に入って、溺れるような感覚の時はこっちに来れることが、過去2〜3回体験したことにより証明されただけだ」
『来る方法何て聞いていませんから、なぜ来るのかと聞いているのです』
「(子供ちゃん怒ってない?)」
「(まぁ、勝手にきてしまったしな)」
「(仙蔵が張り切っているのを、止めることができなかったしな)」
「(なんだお前らは、私のせいにする気か?)」
「(お前が先陣を切ったではないか)」
「(そ、そういう訳じゃないよ)」
「(まぁ、そういうことだが、それより子供になんて言うよ)」
「(気づいていないのか?小平太がバカ正直に話している)」
「「「(・・・・・ま、いいか)」」」
「つまりだな、気になったからだ」
『何に』
「未来の行事にだ!」
『・・・・・教えたことありましたっけ?』
「いや、でも見たんだ」
『は?』
「その、夢見ってやつだと思うんだ」
「前に来た時もそうだったけど、ここでのお祭り?みたいな行事みたいな時に限るのか知らないけれど、僕たち6人が同じ夢を見る時があって、そんな時は来れるみたいで」
「なんか楽しそうだったからな、私も楽しみたいと思ったんだ。でも今はいい匂いだ!」
『自分勝手すぎる!!』
「細かいことは気にするな」


どうにかしてよと言おうと大人さんに助けを求めようとして、後ろを向いたら着々とチョコレートを作り上げている。
そして、その横では向こうからのお土産だろうか?長次が大人さんにお団子を渡していた。
美味しいといいながらお酒を飲んでいる大人さんは、出来上がった生チョコを長次に渡している。

「なぁ大人!私も行事がしたい!!」
『よーし、楽しもう!』
「おー!!」

そう言って、大人さんはどこに隠し持っていたのか、いつの間にそんなに買っていたのかしらないけれど、キッチンの戸棚からお徳用のアーモンドチョコレートを何袋も取り出していた。

『(何故?そして、長次はそそくさとクローゼットに帰っていくし!)』

律儀に一礼をしてからクローゼットの中へと入っていった彼に疑問を抱きながら、もう一度大人さんを見ると・・・・・やばい。

『(大人さんが、いつの間にか酔ってるぅ!あっ!?だから長次は早く帰って行ったんだ。ちゃっかりしてるし、私も退散しとこう)』

ゆっくりと、あまり自分に被害が及ばないだろう端まで行くと、お菓子の入った袋を持つ大人さんに近寄る彼らを見守った。

『では、2月の行事をいっぺんに行いまーす』
「いえーい!」
『では、チョコレート攻撃ー!!あっはっは…』

そういった矢先始まったのは、彼ら5人に向かってチョコレートを投げつける大人さんの姿。
彼らは、というと。

「「「「うわっ」」」」

もちろん焦っていた。
そう2月と言えば、節分とバレンタイン。
アーモンドも豆とカテゴリー分類しちゃった大人さんは、笑いながらぶつけていた。
でも、さすが6年生。
9割は(伊作だけは7割っぽいけど)避けている。
結構酔っている大人さんに、止めてとか一旦止まってという言葉は通用しないと分かったのか、彼らはクローゼットへと逃げ込んで帰って行った。

これ掃除するのは、私なのだろうか…ちくしょう。



だが、投げられていたチョコレートを掴むと懐に入れていた姿を私はしっかりと見た。




2012.2.13
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