03



その名前に近づいてくるのは1人の年寄り。


「大丈夫じゃったか?」
「ん?昨日のじじぃ」
「覚えておったか」
「馬鹿にするなよ」


ベンチにドカッと座りながら、返事を返すと、じいさんも名前の横に腰を下ろした。


「ところで、こんな場所で何しておる?」
「別に・・・」
「家に帰らんと家族が心配するじゃろ」
「(この世界はあたしの世界じゃない)家族なんてどこ探してもいない」
「余計な事を聞いたようじゃな」
「別に、気にしていないよ」


じいさんと名前の見事な食い違いに気づく事はない。
じいさんは寂しそうにしていたが、名前は気にする事無くあくびをしていた。


「家は?」
「さぁ?(家もこの世界にはないだろうな…また親に心配かけちまったな。いや、いまはそれよりこれからだ、野宿生活か)」
「なら、小さいがわしの家にくるか?」
「あたしを拾うってことか?」
「お前が嫌じゃなければな」
「やっかいごとが増えるかもしれないのにか?」
「人生は波乱万丈の方が楽しい時もある」


ここは異世界。
このままここに居ても、この世界に私の帰る場所はない。
屋根のない生活より、どこかに腰を据えたほうが、多少マシ。
年の功というだけはあって、喧嘩っ早い私を拾うことがどれほど厄介事かも感じているかもしれないのに……まいったな。

そう考えた名前の答えは1つだけしかなかった。


「いいぜ。じじぃ、否じいさんに拾われてやるよ」
「なら、まずは飯じゃ。帰るぞ」
「あぁ」


きっとこの世界は、あたしがいた世界じゃない。
この世界は、昔見ていたドラゴンボールと関係あるはずだ。

あたしが元の世界に帰る手がかりは、この世界で願いを叶えると言われているドラゴンボールの龍神が何とかするでしょう。


「(でも、面倒臭いからキャラとかとは関わりをあんまり持ちたくないなー)」


もの凄い本音を頭の中で考えながら、この世界の自分の家へとなる場所へと向かっていった。


「ところで、お前さんの名前は?」
「名前?(この世界じゃ私の名は変なんだろうな・・・・・)」
「そうじゃ、どうした?」
「名前、じいさんが付ければ?」
「ん?」
「じいさんに拾われたからな、好きに呼べよ。それがあたしの名前だ」
「そっか、それじゃキャンディとか?」
「キモイ。もっとマシなのがいい」
「これもマシじゃと思うがな。それに、好きなのって言ったじゃろ」
「限度があるから(この世界やっぱり名前から変だ)」
「なら、ナマエってのはどうじゃ?」
「うん。いいな、気に入ったよ」


名前は、この世界でナマエとなり、これからはナマエとしての生活が始まった。


のは良かったのに、談笑しながら歩いて辿り付いた先は、先程見たカプセルコーポの名前が建物に入っている、一際目立つブルマの家だろう(まだ断言できないから)家。
その横に建っている、一軒家だった。


「ぅげっ!(隣と近っ!!なんだか、キャラと関わってしまうのは仕方がないような近さだ)」
「どうしたんじゃ?ほれ、家に入るぞ」
「あー。ところでさ、じじいは1人か?」
「そうじゃよ」
「ふーん、動物とかは?」
「居てもいいかもしれんの」
「飼わないのか?」
「あぁ、貧乏じゃからのう」
「そっか・・・」
「それにの」
「ん?」
「隣からたまに猫が遊びに来るんじゃよ」
「(そう言えば、ブルマの親が抱いていたな)ふーん」


これからは、じいさんとのちょっとした貧乏生活が始まろうとしていた。

動物が居てもいいと言ったじいさんの言葉に、名前いやナマエはサーベルタイガーを飼えたらいいなと思い浮かべていた。

そのころ森では、サーベルタイガーが何かを感じて嬉しそうに尻尾を振りながら、自分のいた場所まで帰っていた。

戻って、ナマエは、案内されたこれから自分の部屋となる場所にあったベッドに横になりながら考えていた。
この世界で初めてする事は、仕事探し(金稼ぎ)だと。

動物も飼えない貧乏なところにナマエが転がり込んで、もっと貧乏になったらじいさんの生活さえも危ういと想像したからだ。
やる事が決まったナマエは、深く息を吐くと同時に瞼を閉じて、屋根のある安心感からか、眠りについた。

次の日の昼ごろに目を覚ましたナマエは、居間に下りるとご飯が用意されていた。


「ナマエよく寝たか?」
「あぁ」


まぁ、食べなさいと促されて、そのまま座って少し質素なご飯を食べ始めたナマエにじいさんは声をかけた。


「で、ナマエはこれからどうするかの」
「何を?」
「ナマエだと、見た目は学生とかじゃろ」
「いや、もうちょい上だけど」
「なら、学校の手続きもいるじゃろ」
「聞いてる?上だって言ってんだろ。それに、貧乏なんだろ?学校の費用ないんだろ?」
「ないの」
「どの道、行けねーじゃん」
「でものぉ。学校行ってる娘が欲しいのが願いでな」
「おい、じじい。娘より孫って感じだろうが」
「くっ。なら孫で妥協するが、学校はいって欲しいの」
「行くから、大学とかを探しておけよ。とりあえず仕事探してくるから、金が溜まったら学校に行く。これでいいだろ?」
「それなら良い」
「なら早速、仕事探してくっから」


ご飯を食べ終わり、流しに食器を置くと、そのままで良いといったじいさんの言葉に甘えて、迷子にならないように10年以上前の地図を持つと、仕事を探すために外へ出て行った。



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