02
名前の見ている街は、未来都市のような造りをしていたからだ。
名前のいた時代ではこんな街を見たことはない。
知らない世界がそこにはあった。
どうすればいいのか分からず、近くにいた警察か警備員か、それらしき雰囲気の人に勇気を持って声をかけてみることにした。
「ちょっと聞きたいんですが」
「はい。どうしました?」
「ちょっと、迷ったみたいで、ココの場所を知りたいんだけど」
「ここ?ここは西の都だよ」
「(って、どこだよ!?っていうか、最初東に向かってたはずだが・・・・・あぁ、サーベルタイガーのせいか)そっか。ありがとう」
「で、君はどこに行きたいのかな?」
「えっと・・・・・(土地の名前なんか知るかよ)」
「どうかしたかい?」
「(怪しまれる)いえ。映画館前に行きたいんですが、目印とかありますか?」
「映画館ね、ここ真っ直ぐ行くとカプセルコーポレーションの大きな家が見える。そこを左に行くとわかるはずさ」
「ありがとうございました」
名前は出来るだけの速さで、警察の前から走り去った。
警察が見えなくなるくらいで、名前は公園らしき場所のベンチに腰をかけて暗くなる空を見上げていた。
「知らない場所・・・知らない名前・・・見たことがない警官の服。・・・あれは警官でいいんだよな?警備?とりあえず、知らない有名な家」
なんだよカプセルなんとかってと、呟くと何かに引っ掛かりを見つけた名前。
「西の都?カプセルコーポ?見たことがないのに、でも、何故だか見たことがある街並み・・・・・ここは。・・・・・ま、まさかなぁ。あー、星が異常に綺麗だ」
考えられないが、信じる事などできないが、1つの結果へと導きつつある頭を邪魔するかのように、男の声が名前の耳に聞こえていた。
「ほら、おとなしく金をくれよ」
「これ以上抵抗すると痛い目にあっちゃうよーん」
「ははは、なぁ。どうする?って、どうも出来ないけどなぁ」
年寄りを数人の男が囲んで、金を巻き上げようとしているところだった。
「痛い目はこんなんですかい?」
「「「なっ!!!?」」」
名前は、何も言わずに足元の砂をしっかり握り締めて、ゆっくり男へと近寄って行き、一言会話に加わるように呟いて、相手が振り向いた瞬間持っていた砂をぶっかけると、年寄りの目の前にいた男の腹に一発渾身の力で蹴りを入れると、相手がひるんでいる瞬間にもう一人の急所にもう一度蹴りを入れると、ふと息を吸うと吐き出した。
「寄って集って、見ていて気持ちよくないんだ、よっ」
最後の言葉と同時に力をこめて、最後の一人の胸元と腕をしっかと握ると勢いのまま一本背負いを決めた。
街頭の光は名前の後ろから照らしているために、黒い服を着ている名前の顔は見えずらかった。
息を吐いて、相棒をしまおうとすると、後ろから年寄りが声をかけてきた。
「ありがとう。助かったよ」
「お礼を言われることはしてないよ」
「いや、助けてもらったからの」
「そっちにしたらそうかもしれないけど、こっちはただ理解できない今の状態のやるせない気持ちのイライラとうっぷんを晴らしただけで、お礼なんか言われても困る」
「それでも、わしは助かった」
「・・・・・」
「ありがとう」
「・・・・・次は、気をつけなよ」
名前は一言だけ残して、公園を去って行った。
「とは言っても、軽くお礼はもらっとくべきだったかな?」
少しだけ、後悔していたのは間違いではないだろう。
そんな寂しげな雰囲気を纏いながら、違う公園へと向かってベンチに横になっては、いままでの事とこれからの事も考えていた。
朝日が昇りだしたときに、名前に近づくのは昨日の夜の連中。
「どうも、おはよー」
「お礼がしたくてね」
「昨日の子だな」
「こんな場所で寝てるなんて、無防備っすね」
体を起こして、ベンチに腰をかけた状態で足に力を入れて、いつでも蹴れるように体制を整えると、こちらの意図がばれない様に挑発気味に話しかけた。
「まったく嫌な目覚ましだよ」
「褒め言葉としとくぜ」
「それじゃ、早速」
「昨日のお礼させてもらうぜ!」
そう言って、数人の男が名前に向かって走り出したと同時に、名前は両手を握り締め、ベンチから立ち上がった瞬間。
「コラー!!またお前達か!!今日こそ捕まえさせてもらう。そして俺は、金一封の賞与をもらう」
「おい、マジかよ!タイミング良すぎだろ!」
「思いっきり自分の欲を言ってるし」
「そんな突っ込みより、逃げるんだよ」
追いかける警察から逃げるように男達は逃げていった。
そんな光景を唖然と見つめる名前がいた。
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